黒ネコさんは悪い人じゃない②【しゅごキャラ】 (ページ25)

今日:10 hit、昨日:43 hit、合計:94,223 hit

075 ページ25

◇

ケーキを真ん中に置いて身内(＋一人)が誕生日を祝ってくれることに、いつ慣れるだろう。生まれた日にケーキを食べること自体が私にとって当たり前じゃないから分からない。13本のロウソクの火を吹き消した後にカットする長男。ちなみに小さめのワンホールだが半分は次男が食べるし、生クリームが苦手な私は毎年食べない。見てるだけ。

「ケーキが無いと誕生日の感じがしない」という我儘からこういう形態をとっている。私は見てるだけで胸焼けするから特に羨ましいとかも無い。一体誰を祝う会なのか分からないな。雰囲気は嫌いじゃないけど。

キッチンテーブルには両親の写真を並べる。仕事の都合がつかずに今年は父も欠席だ。何も知らない人からすれば誤解しそうな光景だが、父は健在です。

料理を分ければ、それからはいつもの夕食と同じ。話すことも変わらない。今年はイクトさんがいるから四人でできる話が多かったかな。二織がムードメーカーになってくれたから、あっという間に夜は更けた。

片付けは兄二人が引き受けてくれたから、私は食べ物の匂いが充満する部屋の空気を入れ替えるために窓を開けた。といっても網戸は閉めてる。一応8月だからね。でも今日は珍しく冷たい風が吹いていた。

「A。」

「んー？」

「前言ってたやつ。」

肝試しの日に電話で聞いた録音データを私に差し出すイクトさん。そういえば話したいことがあるんだっけ。なんだろう。

受け取って尋ねると、感想というかそういう言葉を連ねる。これ私が聞いていいやつなのかな？ロストじゃなきゃ意味無くない？専門用語とか言われても表面的なことしか理解できないよ私。

下手な相槌しかしないことを不審に思ったのか、イクトさんは「どうした？」と聞いてきた。ああもう、まどろっこしい。

「私じゃないから分かんないよ。その曲作ったの、私のしゅごキャラだから。私はサポートしてるだけ。」

反射的にこはくの方を見やるイクトさん。こはくはブンブンと首を振っている。違うといつもの調子で否定をした。じゃあ誰が…というように私を見ても顔面に答えは書いていないよ。

さて、これからどうしよう。あいつ逃げるの上手いからとっくにこちらの動向を察知してるだろうし。今から部屋に行ってもおそらく意味ない。

と思っていたが、どういう心境の変化か。最近は予想し得ない行動が多い。

とりあえず予告無くキャラチェンジするのはやめてほしい。

.