黒ネコさんは悪い人じゃない②【しゅごキャラ】 (ページ19)

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069# 線香花火は儚いものページ19

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それからAはゆっくり話してくれた。聞いているだけで胸が痛くなる内容なのに、本人は笑っている。それは無理をしているでもなく、心の整理が出来たからだと彼女は付け加えた。

逝去(せいきょ)の理由は病気。病名が発覚して数ヶ月後にAのお母さんは逝ってしまったらしい。

全然知らなかった。今までそういう話になったことが一度も無いから当然と言えばそうだけど。あたしだったらどうだろう、多分…Aのように今笑える自信は無いと思う。

「そんな顔しないでよ。私は全然平気だし、今のはなんていうか思い出しただけだから。」

ややは既に涙目だった。しかし雫が零れるより先に、Aの右手にある線香花火の火の玉がポトッと落ちた。そして大水が張ったバケツの中へ、燃え尽きた花火を入れてやる。

手持ち花火はあと六つ。全て線香花火だった。Aは「この筒型のは噴出花火と単発の打ち上げタイプかな？」と独り言のように述べると、一人一人に線香花火を手渡した。

「皆で一斉にやろうよ。前にママに聞いたんだけど、線香花火の火を最後まで落とさずにいられたら願い事が叶うんだって。」

「え、ほんとっ？」

「迷信って言う人もいるけど、私たちにはしゅごキャラがいるんだよ？非科学的、なんて言われて馬鹿にされたところでじゃん。」

「確かになー！」

輪になって向かい合い、こよりの先に火をつけた。パチパチッという音と火花が先走るのはなでしこの花火。次が空海だった。願い事に近づくには燃えるのが遅い方がいいんだよね…？

…と、少し安心した矢先にあたしの線香花火も火花が飛び散り始めた。すぐ隣のAに目線を変えれば、もう普段と変わらない様子に思えた。

「あっ。」

「あむちーの火の玉落ちたー！」

「えっ！！？……そう言うややだって落ちてんじゃん！」

「ショック……。」

急に短く声を上げたかと思えば、あたしの火の玉が落ちたらしい。しかもいちばん最初に。なでしこたちはこっちを見て笑っている。気を落とすのもつかの間、間髪入れずに今度はややの線香花火が終わった。どうやら、先に火花が飛び散るのかとどうかは関係ないらしい。

最後に残ったのはAとなでしこ。潮風に揺れる火の玉はいつ落ちてもおかしくないほどにぷるぷる揺れている。食い入るようにそればかり見ていると、ついに一方のそれが砂に消えた。

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