黒ネコさんは悪い人じゃない②【しゅごキャラ】 (ページ11)

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「おそい！」

東の空は薄暗い。

まだ日は沈んでいないから今夜は怒られないだろうと思いつつ走ったら、結果は変わらなかった。今日の喝として男子はお風呂掃除、女子は自炊を命じられる。

人数のバランスが悪いため私も掃除の方に手を挙げたけど、やんわり断られた。なんで。

その理由はすぐ分かった。あむは不器用で、ややは料理の経験なし。調理実習は五年生からだもんね…。ちなみに私は家で楽くんの手伝いをするから人並み程度…って感じ。

「うあーん、騙されたーっ。」

「こんなんバカンスちっがーう！」

「まあいいじゃない。女の子四人もいるんだし、自炊ってのも楽し……そうでもないわね。」

玉ねぎのみじん切りをお願いしているあむの目には涙。速いけど手元見て…と言おうとしたら指切って流血した。ハイパー駄々っ子モードのややは人参を握りしめたまま暴れている。ちょ…包丁あるからやめてくれ…。

あむには傷口を洗わせて、私は常備している絆創膏をその指に巻いてあげる。本当なら消毒出来ればいいんだけど、さすがに持参していないしこのお寺には無さそうだ。

この絵図に、なでしこも汗を滲ませる。料理が完成するのか私も不安になってきた。

「スゥが作れたらいいのに。」

「……それだーーー！！」

私の独り言を拾ったのはやや。そしてスゥは待ってました、とでもいうようにあむとキャラチェンジした。さっきまでの手際が嘘のように野菜をカットする。揚げ物や煮込み料理、それこそ海の産物を盛り込んで次々と完成させていく。

食器の準備や使い終わった器具の洗い物しか、私たち三人が入る隙は無いというくらい。一瞬詐欺だと思ったのは内緒にしておく。

食卓に並べ終わると、男子が帰ってきた。料理の完成度に言葉が出ないようだ。それは私達もだけど。みんな、興奮したように頬が赤い。

「いいお嫁さんになれるね。」

「え。お嫁さ……え、あっと…。バッ、バカじゃん！？料理＝嫁なんて考え方古すぎ。旧石器時代じゃんっ？」

唯世に褒められたにもかかわらず相変わらずツンデレを発動させるあむ。もう少し素直になれば、辺里も見る目変わるかもしれないのにと思う。

ていうか本当美味しいな。楽くんにも負けないかも。

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