She's Very

32 Mside ページ32

明日はついに、Aさんとお菓子を作る日。



何を作りたいかAさんに聞いたら、逆におれが食べたいお菓子を聞かれて。

ぱっと頭に浮かんだからアップルパイと答えたらアップルパイを作ることになった。



Aさんと作るならなんでもいいんだけどね。



ああ、なんだか久しぶりにライブ以外で胸が高鳴る。





.





スタジオで練習を終えて、アップルパイの材料を買いにスーパーに行く。



薄力粉が少なくなってたから買うとして…
たまごは一応買っとくか。
バターは家にあるからいらない。



薄力粉をかごに入れて、たまごコーナーに向かう。



６個入りにするか、10個入りにするか…。
たまごはお菓子作るときにしかあんま使わないし。でもいつもより10個入りの方が安い気がするしどうしようか。


そうやってたまごコーナーの前で悩んでいると




「今日はたまご安い日ですね〜」

…聞き覚えのある声が隣からして。
隣を向くと、




「…！Aさん…」




「白井さんこんばんは」

スーツ姿のAさんだった。




「…会社帰り？」

スーツ姿なんだからそうに決まってるのに聞いてしまうおれはかなり動揺しているんだろう。




「はい！白井さんは明日のお買い物ですか？」




「あ、うん、まぁ」




「…このスーパー、金曜日は10個入りのたまご安いんですよ。だから10個入りの方がお得ですよ」

…まるで、おれが悩んでいたことを知っているかのよう。




「…じゃあ10個入り買おうかな」




「毎度ありがとうございまーす(笑)」

おどけてそう言うAさんに思わずおれも笑ってしまった。




…自分でも薄々気づいているけど、Aさんの前だと笑うことが多い。

Aさんと話すと自然と口元が緩んでしまう。メンバーといるときみたいにリラックスできるみたいだ。






「Aさんはもう買い物終わった？」




「あ、はい！今からレジで会計します」




「じゃあ、出口のとこで待ってて」

…一緒に帰ろうって言えばいいのに。待ってて、だなんて有無を言わさず口調で言ってしまった。




「えっ？…あ、はい、分かりました」

不思議そうな表情をしながらレジに向かったAさんの後ろ姿をぼんやり眺めながら、自分の勇気のなさに呆れる。




…たぶん、Aさんを意識しすぎてるだよなおれ。

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