She’s Berry：2nd

+ ページ22

*





あ！マズイ。


声を上げてしまったことにハッとして振り返れば
洋平さんは目を閉じて静かな寝息をたてたままで、
起こさなくて良かった...と、ホッとした。




そのまま寝ちゃった洋平さんも裸のままで、
でも気持ち良さそうに寝ているのを見ると
わざわざ起こして服を着るように促すのも気が引けるし、




あ、でも明日ライブがあるんだよね？
じゃあこのままじゃ絶対ダメ！って思って、


勝手の分からない家の中から寝室を見つけると
布団を持ってきて洋平さんに掛けた。




寝るには少し狭めのソファに
もう一度そっと体を滑り込ませる。




少し洋平さんの方へ体を寄せれば、
回ってきた腕にそのまま抱き締められた。




あ、起こしちゃったかな？って顔をじっと見つめるも
目が開くことはなくて、よく眠っているみたい。




さっきまで洋平さんの温もりを直接肌で感じていたから
洋服越しに感じる体温は少しだけ寂しいな・・・。




でも、それでも、
あなたの隣は充分に温かい。




疲れているはずなのに、
嬉しさのせいなのかなんなのか、
まったく眠くなる気配のない目蓋を閉じてみる。




これから私、
洋平さんの隣に居れるんだ。


なんだか嘘みたいって、
嬉しさで自然と口元が緩んでしまう。




こんなこと、あるんだなあ・・・。




雨の中、一緒に帰ってきて、
水溜まりの雨水でお互いびしょ濡れになって


洋平さんが買った本の話をしてくれて、
その本がちょうど私が見たいと思っていた本で


見せてもらえることになって、
お家に寄ったついでに濡れた服も乾かしてくれて




・・・って、思い返してみると
なんだかその場の流れに乗せられるように
ずるずるとシちゃったな。




ふと、そんなことを思った瞬間、
言いようのない不安が頭の中をよぎっていった。




ちょっと待って・・・？
洋平さんとこうなったけど、
確実なことはなにひとつ言われていない。


よくよく考えれば好きとも言われてないし、
付き合おうとか、
そんな感じの言葉もなかったような気がする。




そのことに気が付いたら、ついさっきまで目の前で
熱い吐息をもらしていた洋平さんが嘘のようで、
まるで現実味がなくなった。





*

+→←+

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す