She’s Berry：2nd

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話なんてしたくない。
怖くて聞けない。




“バンドマンなんて”




初めて会う前はそう思っていた私が、
あっさり惹き込まれてしまうくらい
かっこいい人なんだもん。


周りが放っておくはずがない。




モテる川上さんのことだから、
きっと女の人にだって慣れていて


思いたくはないけど、
一晩限りの恋愛だってきっとたくさんあるはず。




それなのに、そんなことに気付きもせず
これからは傍にいれるのかな？なんて、
この人の大切な人になりたいなんて思ってしまった。




真剣になる前に、
取り返しのつかなくなる前に、
傷つかないようにしたかっただけなのに。




朝早くから、わざわざ会社にまで来ていた
川上さんのことを思い出せば


デスクに座ってパソコン画面を見ていても
私の手は止まったままで、
仕事をするために動くことはなかった。




「え、トラブル！？」




その日の午後2時を過ぎた頃、
明日、客先に渡す予定のデータが
無くなっていることが発覚した。




データ紛失という重大な事実に
フロア全体が一気にざわつき始めた。




紛失っていうのも確かに問題だけど、
明日の納期に間に合わせるために
今から作り直すことになったりしたら
いつ終わるか分からない。




当然、日付は変わるし、
完徹したところで終わるような作業の量でもない。




・・・でもそれなら、仕事を理由に
川上さんに会いに行かなくて済むかも。




きっと私たちは最初から上手くいかない、
そういう運命だったんだ。




そう思ったらドクンと心臓が脈を打った。




・・・なにをそんなに動揺するの？


川上さんのことは諦めるんだから、
一夜の過ちだったんだから、


ここは安心するところでしょ・・・。




そう思うのに、
心臓は大きくバクバクと脈打つばかりだった。




「あの、チーフ、・・・どうしましょう？」




データ管理をしていた子に、
かなりおどおどした感じで話し掛けられた。




いけない。
川上さんのことが頭を過っていたから
険しい顔付きになってたかも。




今は余計なことを考えている場合じゃなかった。
失くした本人は責任を感じているだろうし、
しっかりフォローしてあげるのが私の仕事なのに。





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