消えた凶器 七 ページ43
ほんの一瞬の静寂が訪れた、その後。
弾かれたように敦が懐へと手を差し込む。取り出されたのは、二つ折りの携帯電話だ。チカチカと発光するランプが見えるとともに、わずかに電子音が大きくなる。音の発信源がその端末だと知るには十分だ。
敦は、端末に表示されているのであろう着信元に目をやる。ほっ、と音の聞こえそうなほど安堵した様子で、そのまま携帯を耳へと当てた。
「はい、もしもし……」
断りもなく電話に出るというのは、常識的に無作法なことである。ましてやここは人が一人殺された現場であり、それだけデリケートな場所だ。敦は、成人には満たないとはいえ社会の常識を知っていておかしくない年ではあるし、加えて働いている社会人なのだからそのことに気づかないとは考えられない。
つまり。彼は安室に追及されるあの状況でかなり慌てていたのだろう。だから、かかってきた電話に安堵したのだ。 電話により、一時的とはいえその状況から脱せられるために。
「……はい、……ええ、そうです。はい……」
通話をしている敦は、端末を介する相手に返事をするばかりだった。「はい」「そうです」を繰り返すばかりの敦からは、通話の内容も分からない。と、そこで、敦が「……っ、」と息を飲んだのが分かった。気弱な表情はどこへやら、眉が寄せられ、目が鋭く光る。
「……アリス、ですか。」
敦が発したのは、それだった。
(アリス？ 誰かの名前か……いや、何かの隠語？ いずれにせよ、敦の話し方からして、いまその名を聞いたばかりなのは確か……)
コナンが考える間にも、敦はいくつかやり取りを続ける。
「……はい……え？ え、ええ……はい。え、でも……」
そこで、敦は不自然にコナンの方へ目をやった。
ーーもっと正確に言えば、コナンと安室の二人を、見やった。
「まあ乱歩さんが仰るなら……はい、分かりました。」
(乱歩、だと？)
相手の名前であろうその名は、コナンには聞き慣れたものだ。推理小説を好むコナンはその名を何度も目にしたし、なんならそれは、自身の「名」の元ネタの一つである。
と、思うのとほぼ同時に、敦は端末を耳から遠ざけた。
「あの、すみませんが、少し部屋の外へ出ても大丈夫ですか？」
「？ ええ、構いませんが……。」
目暮が答えると、敦は「ありがとうございます」と言った後、「それで……」と言葉を続けた。
「安室さんと、それからコナン君にもいっしょに来て欲しいんですけど……。」
終わり←消えた凶器 六
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美園(プロフ) - 今日はじめて見ましたがとても惹き込まれました！ (12月24日 19時) (
レス) id: 69d991c9f1 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 大好きな作品です…！ (6月29日 17時) (レス) @page1 id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
むる - え！？！？！？！更新なくて残念です泣泣泣めっっっちゃくちゃ気になります………すごく読みやすくて設定も凝っててめちゃめちゃ良かったです。 (2022年8月14日 2時) (レス) id: 6ed738b467 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃも(プロフ) - 続きが凄く読みたいです。更新お願いします! (2022年7月27日 8時) (レス) @page43 id: 4d9c9f1a17 (このIDを非表示/違反報告)
舞琴(プロフ) - めちゃ続きが読みたいですっ！！！！更新待ってます！！！！！！ (2022年4月23日 23時) (レス) id: 6e4f314873 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菫色 | 作成日時：2018年4月29日 20時
