弍 ページ4
「此処が『東都』ですか、」
きょろきょろと忙しなく周りを見回す敦。横浜以上の人通りの多さに、どうも落ち着かない。
「却説、依頼人の処に行くですよ。」
アーサーは一言掛けると、緩慢に歩き始めた。
置いていかれるまいと、慌てて並び立つ敦。
時間にして十数分。アーサーと敦の目の前には、硝子張りの超高層ビルが聳えている。
「ーー全部硝子って、地震でも耐えられるんですかね？」
敦の口から飛び出したのは、そんな頓珍漢な一言だった。其れに対してアーサーは「僕の知った事ではないです。」と冷静に返し、そのまま、ツカツカと建物の中に入っていってしまう。
「え、ちょっ、待って下さい！ ドイルさん！！」
焦りながらも、敦はアーサーに着いて行く。
然しアーサーは気にした様子もない。受付嬢といくつか言葉を交わし、建物内を悠々と闊歩する。敦は戸惑うばかりで、けれど取り残される訳にはいかないと、ただアーサーの少し後ろを行くだけだ。
ーー実のところ、敦はアーサーの事をよく知らない。ギルドとの戦いが終わるのとほぼ同時に社に“帰ってきた”アーサーとは、自己紹介程度しか会話を交わしていないのである。彼が異能者とは知っているがどんな異能なのかは知らないし、向こうも敦の事は殆ど知らないだろう。
本当に大丈夫なんだろうか、そう思いつつ敦はアーサーに追いつく。
「敦って、面白いです。」
ぽつりと、聞き逃してしまいそうな程小さな呟きが隣から聞こえた。声の主は、云うまでもなくアーサーだ。
「君の事は、治から聞いてるです。すごく面白い少年だ、って。」
ーーそれは、褒められているのだろうか。太宰の場合、敦の言動を本気で面白がっているような気がする。
そんな敦の内心を察したかのように、アーサーは再び口を開いた。
「誇って良いです。治に認められるのは結構珍しい事です。」
敦は、思わぬところで思わぬ形で知った己の評価に気恥ずかしくなった。何となく浮かれた気分になった。
ーーだからか、周りを見ていなかった。
重厚で「いかにも」な扉を、何の躊躇いもなく開けてしまったのである。叩敲も無しに。
「あ、」
「？ どうしたんですか、ドイルさん。」
其処で敦は、漸く自分がした事に気付いた。敦とアーサーを見つめるのは、矢鱈高そうなスーツを身に纏った壮年の男性だった。
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美園(プロフ) - 今日はじめて見ましたがとても惹き込まれました！ (12月24日 19時) (
レス) id: 69d991c9f1 (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 大好きな作品です…！ (6月29日 17時) (レス) @page1 id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
むる - え！？！？！？！更新なくて残念です泣泣泣めっっっちゃくちゃ気になります………すごく読みやすくて設定も凝っててめちゃめちゃ良かったです。 (2022年8月14日 2時) (レス) id: 6ed738b467 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃも(プロフ) - 続きが凄く読みたいです。更新お願いします! (2022年7月27日 8時) (レス) @page43 id: 4d9c9f1a17 (このIDを非表示/違反報告)
舞琴(プロフ) - めちゃ続きが読みたいですっ！！！！更新待ってます！！！！！！ (2022年4月23日 23時) (レス) id: 6e4f314873 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菫色 | 作成日時：2018年4月29日 20時
