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同時刻、魔都「横浜」にて ページ21

「失礼致します。」

不自然なまでに足音は無い。毛足の長い絨毯が、彼の革靴を柔らかく受け止めるからだ。

「何か御用でしょうか、首領。」

其処で、其の空間の主たる男は彼の方へ目を遣った。

「待っていたよ。君には二つの仕事を頼もうと思ってね。一つは、“彼”の始末だ。」
「ーー私に、ですか。」

別に、彼に異論がある訳では無かった。単純に疑問だったのだ。何故其の仕事が自分に回って来るのか、と云う疑問が。
男は、彼の疑問を察したかのように微笑を浮かべ、そして口を開いた。

「“彼”の異能を考えれば、有象無象を百と送り込むよりも君のような手練れを一人送り込む方が合理的。違うかね?」
「成る程、仰る通りです。」

彼は納得したような素振りを見せ、男の言葉に同意を示した。

「まあ、必要ならば黒蜥蜴や遊撃隊辺りを連れて行くといい。聴くところによると、如何やら“彼”の近くには探偵社員が居るようだからね。」

「探偵社員」。その単語に、男は愉快そうに目を細め、彼はやや訝しげに眉根を寄せる。

「真逆、」
「少なくとも、太宰君では無いよ。彼が『其処に居る訳がない』からね。」
「……そうですか。」

僅かながらの安堵を浮かべる彼に、男は「相変わらずだね、君達は。」と笑ってみせてから口を開いた。

「そして二つ目だが……私の方から追って連絡しよう。“彼”の処分を何より優先して欲しいからね。」
「分かりました。」

彼が了承の意を示せば、男は口元に弧を描く。瞳に宿る鋭い光が、真っ直ぐに彼を射抜いている。其処には、この魔都の裏社会を掌握する男としての風格を感じずには居られなかった。

「裏切り者には粛清を。頼んだよ。 ーー中原君。」
「御意に。」

赭色の髪が、ふわりと揺れた。

突然の 一→←或る招宴 捌



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美園(プロフ) - 今日はじめて見ましたがとても惹き込まれました! (12月24日 19時) (レス) id: 69d991c9f1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 大好きな作品です…! (6月29日 17時) (レス) @page1 id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
むる - え!?!?!?!更新なくて残念です泣泣泣めっっっちゃくちゃ気になります………すごく読みやすくて設定も凝っててめちゃめちゃ良かったです。 (2022年8月14日 2時) (レス) id: 6ed738b467 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃも(プロフ) - 続きが凄く読みたいです。更新お願いします! (2022年7月27日 8時) (レス) @page43 id: 4d9c9f1a17 (このIDを非表示/違反報告)
舞琴(プロフ) - めちゃ続きが読みたいですっ!!!!更新待ってます!!!!!! (2022年4月23日 23時) (レス) id: 6e4f314873 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:菫色 | 作成日時:2018年4月29日 20時

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