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或る招宴 参 ページ15

暫し、二人の間に会話は無かった。何となくアーサーの方を見れば、彼は相変わらず硝子玉を掌で転がしている。

「ドイルさん、硝子玉お好きなんですか?」

敦の口をついて出た質問に、アーサーは一瞬不思議そうな顔をした後、「ああ、此れの事ですか。」と手元に目を遣った。赤色の硝子玉が、光を受けてきらりと輝く。

「そうですね……“外側”に価値を見出す事は無いです。僕が好きなのはーーと云うか興味があるのは、寧ろ“中身”の方です。」

其れは、一見具体的に見えて、其の実あまりに抽象的な答えだった。少なくとも敦には、彼の云う“中身”が、錦硝子玉(ビー玉)大理石柄(マーブル)の硝子玉の内部にある色硝子だとは思えない。何か別のものの暗喩なのか、或いは、“中身”に何かがあるのか。
と、其処でアーサーが思い出したように云う。

「そう云えば、敦は僕の異能を知らなかったですね。」

首肯すると同時に、敦の頭にある仮説が浮かぶ。もしかしてーー

「もしかして、ドイルさんの異能力は硝子玉と何か関係があるんですか?」

例えばアーサーの能力が何かを硝子玉に閉じ込める異能だとしたら。其れならば、「“中身”に興味がある」と云うアーサーの発言にも何ら違和感は無い。
アーサーが口を開きかけたその時、

ブーッ、ブーッ、ブーッ……

アーサーの懐に仕舞われた携帯端末が震え始める。着信の合図だ。
アーサーは、断りを入れることもせず素早く電話に出る。依頼人からなのだろう。

「……矢張り、……ええ、そうですか……ああ、はい……構わないです、…………はい、では此方から向かうです……ええ、はい、……分かったです。」

アーサーの声だけを拾えば、此のような意味不明なものになる。が、虎を身に降ろす敦は、人間にはあり得ないほどの優れた五感を持っていた。其れは聴覚とて例外でなく。

「却説、敦。矢張り移動することになるようです。」
「聞こえていました。……本当なんですね。」
「ほら、云った通りです。」
「……そうですね。」

電話の相手は、ほぼ間違いなく依頼主たる男だ。敦の耳は、彼のひどく困惑した声音を確かに聴き取ったのである。
その電話の用件を、簡潔に云うとすれば。

ーー待ち合わせに指定された場所が『存在しない』住所である為、向かうことが出来ない。

「では、行くですよ。」

そう云って、アーサーは歩き出した。
そして敦は、やや既視感を感じつつも、遅れないようついて行くのだった。

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美園(プロフ) - 今日はじめて見ましたがとても惹き込まれました! (12月24日 19時) (レス) id: 69d991c9f1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 大好きな作品です…! (6月29日 17時) (レス) @page1 id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
むる - え!?!?!?!更新なくて残念です泣泣泣めっっっちゃくちゃ気になります………すごく読みやすくて設定も凝っててめちゃめちゃ良かったです。 (2022年8月14日 2時) (レス) id: 6ed738b467 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃも(プロフ) - 続きが凄く読みたいです。更新お願いします! (2022年7月27日 8時) (レス) @page43 id: 4d9c9f1a17 (このIDを非表示/違反報告)
舞琴(プロフ) - めちゃ続きが読みたいですっ!!!!更新待ってます!!!!!! (2022年4月23日 23時) (レス) id: 6e4f314873 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:菫色 | 作成日時:2018年4月29日 20時

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