第3話ー12 ページ6
ジロちゃん side
翌日、俺たちは教官に呼び出された。
「…退学して、後悔していないか?」
片野坂教官が俺たちに聞いてくる。
「…やるべきことを、やったと思ってます!」
カイくんが迷いのない目で答えた。
「…一ノ瀬は?」
「同じです!一語一句完璧に、本間くんと同じ気持ちです!」
俺もカイくんに習って答える。
「…Aは?」
『規則に従って亜美さんを助けられなかったことに後悔するよりも、助けて退学になることを悔やんだ方がマシです。』
その返答に俺は純粋にかっこいいと思った。
そのあと、教官からの説教があったが、いつもより短く終わった。
教官に礼をして退室しようとした時、
『あ、ヤバい…。ごめん、落ちるわ。』
「…えっ?」
Aちゃんが小さく呟いたかと思うと、カイくんに向かって倒れ込む。
「おい!」
カイくんが肩を抱きとめるけど、Aちゃんは力が抜けたまま動かない。
「えっ、Aちゃん大丈夫!?」
「はぁ…間に合わなかったか…。今日はよく喋ると思ったんだよな…。」
片野坂教官が零した声が聞こえて、そちらに顔を向けるが、その引っ掛かりはカイくんの言葉で吹っ飛んだ。
「熱がある。」
「えっ!?」
カイくんは冷静に言ってはいるけど、どうしていいか分からない俺ら2人は焦った。片野坂教官が、スっと側に来て
「…A、聞こえるか?」
その声に目が開くけど焦点があっていない。
「…問題はないと思うが…一ノ瀬、及川に同行してこいつを医務室へ運んでやれ。本間は先に部屋に戻ってろ。」
「え、いや、でも…。」
「返事。」
「はい!」
俺はぐたっとしてるAちゃんを横抱きにして医務室まで運んだ。カイくんとの会話もないまま、不安な夜が過ぎていった。
次の日もAちゃんは訓練には来なかった。机の上に肘をついて、組んだ手に顎を乗せているカイくんに声をかける。
「ねえ、カイくん。俺ら、無理させすぎたのかなぁ。」
「俺らが不甲斐ないせいで危うく売り飛ばされるところだったしな。」
「Aちゃんの部屋にお見舞い行ってみない?」
「それはダメだろ…。助教に見られたらどうするんだよ…。」
「カイくん行かないなら、1人で行ってくるわ。」
「待てよ、何か理由を付けて…っておい!」
カイくんが煮え切らない態度を取るもんだから、俺はさっさと4階目指して壁を登った。
「待てって〜!」
後ろからカイくんの声が聞こえる。
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おむらいす(プロフ) - どんな質問でしょうか (2021年3月27日 23時) (レス) id: 75ace3dbad (このIDを非表示/違反報告)
レム - 聞いても大丈夫でしょうか? (2021年3月25日 18時) (レス) id: 59a18b3b65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無名 | 作成日時:2020年8月14日 18時