第5話ー20 ページ46
凛花さんの後を追えば、
「ジロちゃん!」
『凛花さん、下がって!』
ジロちゃんはアパートの廊下で倒れていた。
私は凛花さんの前に立ち、男たちを見据える。狭い通路で乱闘になって、凛花さんもどこからか手に入れた消化器で応戦する。
「…いったぁ…!!」
やはりと言うべきか、急に凛花さんはお腹を抑えて、その場にしゃがみこんでしまう。
私はすぐに凛花さんに近寄る男の首根っこを掴んで後ろに投げ、凛花さんを庇った。
それでも襲ってくる男の胸ぐらを掴んで壁に押し当てる。
『何をしている、一ノ瀬次郎!早く立たないか!』
「くっそ…。助教のマネかよ…
へっ…ダセェかっこ見せんな…次郎!!」
ジロちゃんは力を振り絞って、凛花さんに襲い掛かろうとした男を投げ飛ばした。
「何戻ってきてるんだよっ!!走れ!!!」
ジロちゃんが凛花さんを連れて外へとかけ出す。
私は消火器の栓を抜いて相手に白い粉を撒き散らして、男たちが怯んだ隙を狙って2人を追いかける。
凛花さんの会社の倉庫に避難したころには、次郎ちゃんは傷だらけだった。
「ねえ…あいつら何?」
「…うちらのブツ狙ってる。」
「ブツって…それ?」
ジロちゃんが視線で指したのは、凛花が抱えていたボストンバックだった。私は相手の素性を2人に伝えるべきか迷う。
「それ売れば…やっと300万貯まる。そしたらこの街出て、遠いところでこの子と暮らす…。」
凛花さんがお腹をさすりながらそういった。
「悪いことって入り口は広いけど、その先は底無し沼。どんなに抜けたくても、抜けられない…。」
「一度は抜けたじゃん!」
「太郎のおかげでね…。でも太郎はもういない…。
だから、誰も知らない場所でリセットしてこの子育てる。そのためにも、お金が必要でしょ?」
「いや、そうかもしれないけど…!」
「もう!!あの頃の私じゃないの!」
凛花さんは立ち上がって涙を流した。
「太郎が生きているころとは違うの!私は変わるしかなかったの!
…じゃあ何?2人が代わりに稼いでくれるわけ?」
『私達にそれは出来ない。
申し訳ありませんが、凛花さん本人に頑張っていただくしか…』
「…次が本当に最後だから許して。」
それ以上は何も言えずに沈黙が降りてくる。
そんな時、ドンドンと扉がノックされた。
私とジロちゃんで金属バットを構える。
「…大丈夫、ここ知ってるのは仲間だけ。」
中に入ってきたのは、白木だった。
146人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おむらいす(プロフ) - どんな質問でしょうか (2021年3月27日 23時) (レス) id: 75ace3dbad (このIDを非表示/違反報告)
レム - 聞いても大丈夫でしょうか? (2021年3月25日 18時) (レス) id: 59a18b3b65 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:無名 | 作成日時:2020年8月14日 18時