第5話ー17 ページ43
その後、屋上に向かったジロちゃんとカイくんと別れて、部屋に食堂の人に頼んで作ってもらった夜食を取りに行く。
私が屋上に向かうと、2人は柵に手をかけて夜風に当たっていた。
『やっほ!カイ&ジロー!』
「Aちゃん!」
2人は驚いたような顔をするが、ジロちゃんはバツが悪そうで、すぐに下を向き、顔を合わせようとしなかった。
『何の話してたの?』
「…SOSだったんじゃないかって話だよ。
凛花さんが子どもをジロちゃんに運んでって頼んだの。
身の危険を感じてるんだと思うんだ。」
「…誰かに狙われているってこと?」
ジロちゃんの脳内には、あのナイフやバットが過ぎったんだろう。
『私が2人を探してたのもそれを知らせようと思ってさ。
ここ最近、覚醒剤の売人グループの男女がかなり殺されている。
凛花さんたちのグループも狙われている可能性が極めて高い。』
「今はよくても、子供が生まれた後で襲われたりなんかしたら、子ども抱えたまま逃げたり
出来るか?」
「…だったら、産まれてくるこの子を預かってって正直に言えばいい。」
「じゃあジロちゃんに聞くけど…凛花さんに正直に好きだって言えたことあるか?」
カイくんの言葉にジロちゃんは黙って視線をそらした。
「俺たちは、大事なことに限って正直に言えない。」
「思ってもない酷いことは言えるのにね…。
いくら仲が良くても、いくら付き合いが長くても…
自分の気持ちは自分の言葉でちゃんと言わないと相手には伝わらない。
相手が自分の気持ちを察してくれることに期待して、誤解が生まれて…
そのまま一生会えなくなるってことだって…」
「さっきは…ごめん…」
ジロちゃんが短く謝ってくれる。私はジロちゃんに向き直った。
『大丈夫だよ。それより、これ。ご飯食べてないからお腹すいてあたっちゃったんですよね?』
そう言って食堂で貰った夜食をジロちゃんに渡す。
「えっ…いや、俺、そんなに性格悪くないっていうか…」
『嘘ですよ。それ、食堂の人に頼んで作ってもらったものだから、明日、お礼言いなよ?』
「うん…」
「じゃあ、私は戻るわ。カイくん、あとよろしくね〜。」
ジロちゃんの目に光が戻ってきつつあるのを確認して、私は屋上を後にした。
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おむらいす(プロフ) - どんな質問でしょうか (2021年3月27日 23時) (レス) id: 75ace3dbad (このIDを非表示/違反報告)
レム - 聞いても大丈夫でしょうか? (2021年3月25日 18時) (レス) id: 59a18b3b65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無名 | 作成日時:2020年8月14日 18時