第5話ー5 ページ31
『見てないですねぇ…』
「お前のファイルにもないのか?」
嘘で乗り切ろうとした私を馬橋刑事が許してくれなかった。
「ないですよ。ってか、もう終わったじゃないですか…。」
「はっ…裏切り者の娘が偉そうに口聞いてんじゃねぇよ。」
そう言って根本刑事が私に顔を近づけてくる。顔を背けるとジロちゃんが目に入った。ジロちゃんは手に取った写真を見て目を丸くしていた。
「君は…見たことあるようだな…?」
「凛花です…。俺の…幼馴染みです…。」
ジロちゃんが、戸惑った表情でそう告げる。さっきまでの眠そうな表情から一変、信じられない、と目線が動き続けている。
「ちょっと君たちここで待っててくれる?先輩、ちょっといいですか?」
「ん?ああ。」
根元刑事が馬橋刑事を連れて取調室の外へと出て行った
それからしばらく取調室で待たされた間も、ジロちゃんは落ち込んだ様子でパイプ椅子から動かない。
「ねぇ、Aさん。さっきのファイルって何の話?」
「カイくんは気にする必要はないよ」
やや冷たくあしらってしまったかもしれないと思ったが、顔を見るのは少し怖かった。どうしていいかわからず、ジロちゃんのほうを見ると、今までの彼からは考えられないほどに落ち込んでいた。
しばらくして、刑事2人が戻ってくる。
「君達に頼みがある。潜入捜査をやってもらいたい。」
根元刑事の話ではジロちゃんと凛花さんとの関係性を利用して、売人グループのアジトを突き止めてほしいというのだ。
『私達、学生ですが?』
「九条の娘なら、こんなの簡単だよな?」
『それ以上、その話をするならお断りしますけど?』
「こっちこそ、お前の学校にバラしてもいいんだぞ?」
向こうが挑発してくるので、睨み返す。
「あの!その話…お受けします。」
カイくんの言葉で滞った流れが動き始めた。
※※※※※※※
寮に戻ってすぐ、丸橋刑事と根本刑事、何故か同行している及川助教に連れられて男子寮の315号室の前にやってくる。
そこには、笑顔でグーパータッチをするカイ君とジロちゃんの姿があった。
「おい、お前ら!」
丸橋刑事が2人に声を掛けると、2人は驚いたようにこちらを見て、首を傾げた。
「お目付け役を条件に、許可が下りた」
その言葉に、カイくん達の死角にいた及川助教がドアの前に立つ。途端に立ち上がって姿勢を正す2人。
まだ警察学校の学生である私達にとって、初めての潜入捜査が始まった。
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おむらいす(プロフ) - どんな質問でしょうか (2021年3月27日 23時) (レス) id: 75ace3dbad (このIDを非表示/違反報告)
レム - 聞いても大丈夫でしょうか? (2021年3月25日 18時) (レス) id: 59a18b3b65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無名 | 作成日時:2020年8月14日 18時