169.しっかり抱きしめて ページ6
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和也「んな泣くなよ。ぶっさいくになってるけど」
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人を小馬鹿にする態度で鼻から手を離す。
いつもは左手でちょっかいをかけてくるのに、今日は右手。
左手が使えないからだ。
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「…」
和也「反論しないの。今日は」
「…」
和也「…西野さん？」
「…」
和也「きこえてますか」
「…」
和也「…Aさーん」
「…」
和也「西野Aさ…ぅわ！？」
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カズが叫び声をあげたのは
私が思い切りカズの胸に顔を埋めたから。
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カズの匂いが鼻いっぱいになって、消毒液の匂いなんかどっか吹っ飛んじゃう。
バカみたいにアホみたいに止まらない涙と、ズルズル出てくる鼻水を止めようともしないで
両手でカズの肩あたりをどんどん叩く。
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「…死ぬかと思ったんだから…！」
和也「…勝手に殺すなよ」
「違う！私が！」
和也「…」
「なんなのっ…、あんたなんなの…」
和也「…」
「…心臓…、いくつあっても足りない…」
和也「…」
「…っぅー…うう」
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バンバンカズを叩いても、何も変わらないってことは分かってる。
でもこの泣き顔をカズに見られたら負け。
おでこを彼の胸にグリグリ擦り付けて、ひっく、って喉を鳴らしたら
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和也「……ごめん」
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ぽん、と不意に私の頭に乗せられた大きな手のひら。
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それは間違いなくカズの右手で
それはなんの迷いもなく私の髪の毛をなぞっていくように
何度も。何度も何度も。私の頭を撫でた。
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1分ぐらい経った頃。
私も少し落ち着き始めた頃。
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＊「二宮さーん」
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扉の向こう側から、お医者さんらしき人がカズの名前を呼んで
すっと体温離れてく。
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和也「ちょっと行ってくるわ」
潤「俺もいく」
和也「…お前は親か(笑)」
潤「親みたいなもんだろ」
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カズは両親が既に他界している。だからfishに拾われた。
潤くんはニッカリ微笑んで、カズの隣に立って扉の向こう側に消えていく。
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静まった薄暗い廊下。
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琴海「…西野さん…」
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本題は、どうやらここかららしい。
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