180.言葉巧みに誘導されて ページ17
.
.
俺
しばらく
ここで
厄介になりまーす
.
.
和也「野菜室がせっかくあんのに宝の持ち腐れってこういうことだわ」
.
カズはいたって普通通りの顔をして野菜室を開けて呆れた口調で私を見て笑う。
言葉の意味を理解したいのに私の足りない脳みそじゃ消化しきれなくて
多分今、情けない顔してる。
.
.
「…は？」
和也「さっきの答え。正解はぶっぶー」
「…」
和也「俺ね、潤と一緒に暮らしてんのよ」
.
バタン、と野菜室が元の位置に戻る。
呆気にとられている私の元にじりじり距離を詰めて
ニッコリ微笑んだかと思えばそのまま横を通り過ぎてまるでわが家のようにソファにボスンと腰を沈めた。
.
私もそんなカズの姿を追うように、体を反転させる。
奥の窓から見える都会の夜景。
.
.
和也「ちょーっと潤と喧嘩しちゃってね？帰るのが気まずいっつーか」
「…」
和也「まあ家出みたいな？大野さんは頼りたくねぇし、ホテルも金ないし」
「…」
和也「あんたの家ならいっかな、って」
.
…全然よくない。
.
いっかな、って言った時の眉間にしわを寄せてバチコーン、ってウインクしたカズ。
悔しいけどそれがすっごくカッコよくて、もうなんだか胸が大変なことになってる。
.
好きな人が家にいるってだけでも大事件なのに
加えてしばらく家出先の住まいにしてくれ？
.
「…帰って！ネットカフェ行って！」
和也「へえ」
.
カズがゆっくりと足を組んで
挑むような上目遣いをしてくる。
.
.
和也「病人にあんっな狭い、煙草の匂いが充満してるネカフェに行けと？」
.
ぶらぶらー、と左腕を揺らす。
.
何度でも言おう。
ーーーー…この人は狡い。
.
.
「…っとにかく！わかった今夜は泊まってもいいよ。でも！明日には帰ってもらうからね」
和也「文句なら潤に言えや」
「潤くんは関係ありません！」
和也「んだそれ」
「私ソファで寝るからカズはベッドで寝て。一応左手骨折してるもんね」
和也「一応じゃねえし。バリバリ折れてるし」
.
.
ギャアギャア言い合いながら、夜。
時計が困った顔で私たちを見下ろしてた。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4927人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
