176.どろぼう ページ13
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流れに身を任せるということはこういうことなんだと
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「…ん？」
和也「部屋番号。なんだっけ？」
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私はつくづく思った。
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いや、ね？
さっき改札機を潜り抜ける時の質問の意図はよく読み取れなかった。なんで私の家の最寄りなんて聞くんだろうって
何かあるのかな、とは思ってた。
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でもさ。いい歳になってるクセに手を握られているだけでドキドキ心臓が吐き出しそうなんて
そんなバカみたいなことあるわけないって思い込みながら歩いていたものだから
気づいたら電車に乗っていて、気づいたらホームに降りていて、気づいたらまた改札機を潜り抜けていて
気づいたら、私の家のマンションのエントランスにいた。
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ハッと意識を取り戻したのはカズがエントランスの自動ドアのロックを解除したいがために
私にそう、尋ねて来た時。
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「…えっ、いやなんで」
和也「良いから早く鍵渡せや」
「はっ？いやいや…なんで私の家に来てるの」
和也「今更？最寄り聞いた時点で気づけよ」
「そんな無茶な！」
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時刻は夜更け。エントランスでギャアギャアいがみ合ってる男女なんて
近所の関係ない人から見たらただの迷惑でしかない。
さっさと鍵開けろ！っていう言葉に素直に従ったら負けな気がして
鍵を出すのを渋っていたら、まるでそんな私たちをあざ笑うかのように自動ドアがすー…と開く。
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え、鍵開けてないのに。って二人で目を丸くしたら
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＊「こんばんはー」
「あ…、こんばんは…」
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いかにも！な女の人がメイクバッチリで夜のお仕事に行くのか向こう側から出て来て
こんばんは、と愛想よく挨拶されたものだから返さないわけには行かなくて
その女の人が私たちの横を通り過ぎた瞬間。
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「あっ！？」
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ラッキーと言わんばかりにカズが自動ドアを潜り抜け見事マンション内に侵入成功。
…なるほど、泥棒はこうやって入り込むのか。セキュリティも何もあったもんじゃない。
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肩をずん、と落としてエレベーターへと無言で向かって行くカズの背中をまた追いかける。
なんで家に、と思う反面
女としての淡い期待を持ち始めている自分もいた。
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