164.タユタウウタウ ページ1
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潤「……好きだ」
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プップーってどこからかクラクションの破裂音が聞こえた。
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煌びやかなネオン街が目の前に広がっていて
オフィスビルなんかがよく見える橋の上。あの灯りの数ほど、人が働いているという証。
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私の後ろでは何台もの車が走り去っているのにその姿は見えない。
それは何故か。
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ーーーー…潤くんに、抱きしめられているからだ。
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ぎゅっ、とまるで宝物を扱うような優しい抱擁。
男の人だからすっぽりと簡単に私を包み込む太い腕。
耳元には潤くんの唇が寄っていて、好きだよと囁かれる。
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全身が揺蕩うように熱い。
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「…じゅ、んく…ん？」
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一瞬フリーズした。
頭が真っ白になって、視界がチカチカするってこういうことを言うんだなって
初めての感覚に戸惑う。
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橋の下の水面が、街の光を反射させてゆらゆらとその綺麗な波間に映し出す。
それはまるで私の今の気持ちを表しているよう。
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「…やっだなぁ…、もう！またそうやってからかって、大丈夫元気出たから」
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愛想笑い。苦笑い。作り笑い。
あは、って笑って首元に回された腕に手をかけて離そうとしたけど
グッ、と言葉に反して強くなる腕力。
ギュッ、と息苦しくなるまで抱き締められる体。
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潤「…冗談じゃないよ」
「……っ」
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耳元で甘く呟く。
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潤「俺は…、Aちゃんが好きだよ」
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瞬きが出来なかった。
ぴくぴくと動くのは睫毛で、目蓋は不思議と降りてこなかった。
唇はきっと格好が悪い半開き。
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そっ…と首元から潤くんの腕が引かれて
解放されたかと思いきや肩を掴まれて、クルッと体が半回転させられる。
潤くんと向き合う状態。 今度はしっかりと走っていく車が見える。
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…でもこの状況は失敗だと思った。
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潤「…カズが菜穂さんを好きでも、俺がなんと言おうと真正面から向かってたAちゃんを見て」
「…」
潤「スゲェな、って思った。この子強ぇな、って」
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だって、ほら。
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潤「守ってあげたい、って思った」
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真正面に向かい合ったら、心が揺れる。
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