神様なんかになれなくても ページ31
観覧車にようやく追い付いた時、観覧車の軌道の先に見慣れたサッカーボールが巨大に膨らんでいくのが見えた。
しかし、それでも観覧車の勢いは殺すには不十分だった。
私は運転席の方に合図を出し、クレーン車が観覧車に激突した勢いでボールが押し潰してる建物の屋根へ飛び移る。
そして、ズボンに着けられてた“盗聴器”を手に取ってソレに向かって話し掛けた。
『手伝ってやんよ、江戸川。』
それだけ伝え、盗聴器を投げ捨ててイヤリングを外した。
『
手を翳して叫ぶと、水の壁が観覧車の動きを抑えていく。
それでも力は弱く、私は全身の力を全て出し切って壁の錬成に徹する。
何故か脳裏には今までのやり取りが走馬灯のように駆け巡っていった。
ーー…貴女ともっと早く出逢えてたら、私も変われたかしら。
そんなの知るか。これから先はキュラソーが決める事だ。過去を悔やんでも変えれはしないんだよ。
ーーAさんは安室さんと似て他人を優先し過ぎだっ!
お前がそれを言うなクソガキ。こっちはフォローで大変なんだよクソが。
ーーお前が無茶をするのは目に見えている。
あぁそうだよ秀さん。私はアンタらにずっと生きてて欲しいんだよ、それがなんだよ。あの睡眠薬、結構強めのヤツだったろ。
ーー…俺が、どんな想いでお前に生きてて欲しいと!!
私もだよ、零さん。
私は零さんに生きてて欲しいんだよ。
結婚してさ、家族になりたいんだよ。
アンタが……零さんが好きだから。
【…誰かを救う歌を歌いたい。
誰かを守る歌を歌いたい。
君を守る救う歌を歌いたい……無理だ。
君は君が勝手に君のやり方で幸せになれる。】
視界が金と深紅に染まっていく。
心臓と頭が強く脈打ち、感覚が研ぎ澄まされていく。
【こんな歌で君のジュクジュク腐った傷痕が埋まるもんか。
君を抱き締めたい、叫んであげたい、傷痕も痛みも全部。
でも所詮君は強い。君はきっと一人で前を向いていくんだ。】
光の羽が舞い、いつの間にか観覧車が完全に停止した。
私は水の壁を消してその場で座り込んだ。
『……とまっ…た。』
誰も死なずに、誰も犠牲にせずに。
その事実が嬉しくなり、私の目からは自然と涙がボロボロ溢れた。
あぁ、やり遂げたんだ、私。
そう自覚した瞬間、痛覚が鈍って壮絶な眠気に襲われた。
何故かソレが【死】だと悟り、私は抵抗も虚しく瞼を閉じた。
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四條暁(プロフ) - 明けましておめでとうございます!!今年も皆様にとって実り多い年になる事をお祈りいたします!これからも宜しくお願い致します!!m(_ _)m (2021年1月1日 1時) (レス) id: e97b238670 (このIDを非表示/違反報告)
四條暁(プロフ) - 【3R】の正体、皆さんは分かりますか?(お気に入り登録49人突破!登録して下さった方、読んで下さってる方に感謝です(*´▽`*)) (2020年12月27日 18時) (レス) id: e97b238670 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:四條暁 | 作成日時:2020年12月20日 4時