その妻、手紙を受けとる ページ5
何故私にそれを頼んだのかは未だに分からない。
だけど、もし本当なら筋が通る。
何らかの理由でお互いに両親を失った者同士だが、所詮は私は他人に過ぎない。
私の両親の兄弟…それか祖父母が居てもおかしくないのに、わざわざハリーと同じ家に引き取らせた。
なんら縁もない、それこそあの時の三人の内誰かが引き取っても良いはずなのに。
それはもしかしなくとも、ハリーが魔法を暴走させないようにフォローをしろ、と言うことではないだろうか。
けどそれだと一つおかしい。
だって、つまり【私】が私だと知ってないとあの時の発言は成り立たないと思ったからだ。
あらかじめ私だと知り、なおかつあの時の頼み事をしたのなら……黒幕はあのお爺さんだろうか?
なら何がしたいんだ…?
あの夜、彼は確かに言った。
“あの言葉”を信じるのであれば、また彼に相見えるだろう。
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今日一日大変だった。
爬虫類動物園に行ったら行ったでダドリーが動物を脅かし、動かなければ騒ぎ出す。
ハリーが近くにいた蛇に「ごめんね」と話し掛け、まさかの蛇と会話が出来てしまった。
意志疎通が出来る蛇が居てもあまり驚かなかった自分の麻痺さに溜め息を吐くと、そこへダドリーが押し退けて来た。
あまりの横暴さにハリーがダドリーを睨み付け、途端に檻代わりの硝子は瞬く間に無くなった。
ダドリーは支えを失いそのまま蛇のいる檻の内側に倒れ、びしょ濡れになっていた。
蛇はこれ幸いとばかりに檻から抜け出し、優雅にお外へお散歩に。
周囲の人が蛇に気を取られてる隙に私は念を込めるように硝子があったそこを見つめ「戻れ、硝子」と心の中で唱えた。
……その後は割愛。
そしてそれから数日を経ち、そろそろ私の誕生日とハリーの誕生日が近付いてきたある朝。
「ん?」
朝の郵便を受け取りに行ったハリーが小首を傾げていた。
『ハリー?どうした?』
ハリーの手には数通の手紙が持たれ、その内の2通を見つめていた。
私も彼の手元を覗き込むと、見るからに上質で高級そうな封筒だ。
デザインが2通とも同じな辺り、送り主は同一人物だろうか。
ハリーが1通渡してくる。
戸惑いながら差出人を見て、私の顔は険しくなった。
《プリベット通り4番地、リビングのソファ。シーナ・ガルシーア様》
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作者名:四條暁 | 作成日時:2023年4月20日 0時