その妻、理解する ページ3
『ちょっとハリー、頭に埃が乗ってる。』
寝ぼけ眼で朝食を造ろうとするハリーを止め、私はまだ跳ねてる髪に触れる。
「仕方ないんだ。僕の寝てる上で珍獣がへんてこなダンスをしてたんだから。」
私に頭を預けながらそう呟くハリーに同情し「なら仕方ない」と返した。
埃を払っていると彼の左側の額が露になる。
稲妻の形にも見える傷痕、それがハリーのちょっとした特徴だ。
彼は赤ちゃんの時からこの傷痕があり、それは切り傷とも見える。
…傷は浅いはずなのに10年経った今も変わらず額の傷は癒えていない。
「ねぇ姉さん、ちょっと聞いて欲しいんだ。」
『うん?なぁに?』
所謂【前世からの記憶】があるせいか、私は11歳らしからぬ言動が多い。
そして一日違いとは言えハリーより誕生日が早いからか、ハリーはたまに私を「姉さん」と呼ぶ。
彼が姉呼びをする時、大概が相談や悩み事だ。
それを悟り穏やかに先を促すと、ハリーは「今日、変な夢を見たんだ」と呟く。
『変な夢?』
「そう、知らないおじさんと空を飛んでるんだ。」
ハリーのその言葉に私は思わず行きを止めた。
その内容はまさしく、私達が体験したもの。
しかし彼はまだ物心つく前の赤ちゃんだった。
「おかしな夢だろう?夢なのに変に現実に近いって言うかさ、やけに鮮明なんだ。」
『……そうだね、とても…おかしな夢だ。』
私はそれだけ言い、ハリーに朝食をお願いした。
……私がこの11年で分かった事はあともう1つある。
それは、私とハリーは所謂【魔法使い】だという事だ。
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作者名:四條暁 | 作成日時:2023年4月20日 0時