その妻、サンタに会う ページ1
……うわぁ、ようやく自分の手が見えた。
小さい、あまりにも小さい。
頼りない程細く短い指、まるで小さなクリームパンのようにふっくらした手の甲。
『だぅ…………。』
思わぬ角度からダメージを喰らい、私は再び内心肩を落とした。
黒いサンタは「そ、そんな急に大人しくならんでも…」と戸惑ってる様子だが知らん。
「おお、ハグリット。」
不意に別の声が聞こえる。
その声の主はどうやら黒いサンタより立場が上なのだろう。
今までの慈愛に満ちた笑みが少しキリリと引き締められた。
「子供達はどうじゃったかの？」
「ええ、一人は泣き疲れてぐっすり眠っちまってます…ただシーナは目が覚めちまったようで。」
小さな苦笑と共に、掴んでいた太い指が離れる。
そして、今度は正真正銘マジもんの【サンタクロース】みたいなお爺さんが顔を覗かせた。
メガネを掛けてるサンタクロース(仮称)は私に微笑みかけ、そのまま私の頭と臀部辺りに両手を回す。
ふわりと抱き上げられ、視界が慣れた高さになった。
そうして周囲を見渡すと、何度目かの困惑に暮れた。
明らかに日本の造りとは違う住宅街、ガレージ、表札にポスト。
……ここは、本気でどこだ…？
まだ自分が若返りを越えて赤ん坊になってるのにも受け止めきれてないのに、この見慣れない風景。
そして、サンタクロースの肩越しで目が合ったマダム。
緑色と黒を基調とした衣装は厳格な雰囲気があるその女性は、私をとても労しげに見ていた。
「あぁ…可哀想に、まだこんなにも小さい…。」
そう言って女性は私の頭を撫でた。
『あぅ…？』
「そう心配せんでも良い。君にはちと、その時まで見ていて欲しいのじゃ。」
サンタクロースはそう言う。
「見ていて欲しい」って何をだ。
てか仮にも赤ん坊にそんなのを頼むなよ。
思わずいつもの癖で冷たい目でサンタクロースを見る。
「大丈夫じゃ、必ずまたーーーーー……。」
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作者名：四條暁 | 作成日時：2023年4月20日 0時
