31 ページ31
程よくアルコールが身体に回ってから少しして、私達の話題は思い出話から近況報告に変わった。
杜宮の仲間達とは数年前の結婚式以来会っておらず、ほぼ連絡ばかりで顔もろくに見ていなかった。
シオが知る限りでは特に困った事もないみたいで安心し、今度はこちらへ話題が振られる。
シ「で?今更また学生やってる気分はどうだ?」
『普通かな。ほぼノリで何とかやっていけてるし、いざって時は零さんが助けてくれるし。』
シオは「そうか」と一言返し、話はそこで途切れた。
唐突に訪れた静けさに、小さく聞こえたのは虫の鳴き声。
唯一私達を照らしてるのは満月で、何かと騒々しい都会とはかけ離れた落ち着いた場所と化す。
まぁ、別に居心地の悪い
私もシオも、必要以上に話を広げたりはせずに相手の話の聞き手に徹するのが
杜宮でも楽しげに話してる仲間達から一歩引き、吾朗先生と一緒に聞き手をしてたものだ。
シ「……よ。」
『ん?なに?』
ふと、仲間達と肩を組んで終焉と戦ってた日々に思いを
シ「…何はともあれ、今のお前が幸せそうで良かった。」
あの頃から何も変わらない、ぶっきらぼうだけど優しい目が私を見つめながら告げる。
その一言に私は言葉を詰まらせ、何度か水揚げされた魚みたいに口を開いては閉じて言葉を探す。
昔の、零さんにすら言うのを
『…あの時さ。』
酔いも回り、親友に会った為の感傷か。
どちらでも構わなかったけど、あの時言えなかった言葉を今なら言える気がした。
『私の味方だって言ってくれて、ホントにありがとう。…私の事、信じてくれてありがとう。』
どんなに悪意に満ちた噂を聞いても、シオ達は笑い飛ばして真っ直ぐに私を見ていてくれた。
私が国防から出された任務で米花町へ行く時も、信じて送り出してくれた。
『ありが…へぶっ!?』
シ「なぁに感傷的になってんだよ、らしくもねぇな。」
ベチリ、シオが呆れたように私の額を叩いた。
シ「大体、テメェのダチ信じるのは当たり前だろうが。今更な事言うな。」
『っ〜〜!こンの、KY!!ここは胸熱な展開になるのを察しろ!!』
シ「知ってんだろ、俺はそう言うのは苦手なんだよ。」
193人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:四條暁 | 作成日時:2021年8月9日 5時