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その様子は見ようによっては【兄弟愛】なのかもしれない。
…だけど私には、どうしてか【頼れるのは自分達だけだから】と言ってるように思えた。
その時ふと、馨の頬にうっすらと切り傷が出来てるのが見えた。
『かお…。』
美「ブラボーーーー!!」
美鈴さんの歓声、そして割れんばかりの拍手喝采。
美「爽やか兄弟愛!みすずっち感動!プラス100点満点!勝者は常陸院ブラザーズよぉ〜!」
光/馨「「やったーー!」」
美鈴さんがそう高らかに宣言し、ドッペルはいつも通りに笑ってハイタッチした。
その様子に周りは【いつもの作戦】と勘違いし、ドッペルはそれに乗っかるように舌を出す。
何度か指摘しようかと思ったが、固く繋がれた手を見て止めた。
『…取り敢えずここの片付けばやっとくから、さっさと荷物運んだら?』
少し言い方がキツくなったかもだが、ドッペルは何も返してはこなかった。
環先輩を始めとした部員がドッペルに釘を刺すのを横目に、ハルヒがガックリと肩を落とした。
小さく溜め息を吐きつつ植木鉢の破片を拾おうと手を伸ばすと、いつの間にか隣に居た零さんに止められた。
零「真琴、素手で触ったら危ない。」
『あ…ごめん。』
零さんが大きな破片に小さなソレを集めていき、私は土と植えられてた花を片付ける。
けど、どうしても馨の頬の傷が気掛かりだ。
零「…真琴、彼の手当てを頼めるか?」
不意にそう呟かれ、一瞬だけ息が止まった。
思いがけない彼の言葉に、千切れた若葉を拾う指が止まる。
『けど……。』
あれだけ馨が私に近付くのをあまり良く思ってない零さんが、まさかそんな事を言うとは思わなかった。
静かに聞こえたはずの零さんの声は、胸の奥がギュウッと強く掴まれたように切ない。
長年連れ添ったからこそ、私には分かった。
【どんなに迷っても構わない、だが必ず“俺”を選んで欲しい】
そう、切に
『大丈夫だよ、怪我って言ってもかすり傷みたいだし。それに、今は二人にしてあげたいから。』
彼が、零さんがどれだけの勇気を持って言ってくれたか私には全て理解出来ないかもしれない。
けど、もしも私が逆の立場だったら、こんなに強気では居られないだろう。
相手がどれだけ自分へ
気持ち一つ、少しの掛け違いで、私達の関係は
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作者名:四條暁 | 作成日時:2021年8月9日 5時