45 ページ45
『どうぞどうぞ。』
少しくらい休憩くらいしたって
私がそう言うとハルヒはズンズン部室を後にした。
『さて、霧美ちゃん。ケーキでも食べよっか?』
霧「ケーキ?いちごのもある?」
『あるよ〜。』
「やったー!」とぴょんぴょん跳び跳ねる霧美ちゃんと手を繋ぎ、私は早速少し早めのおやつの準備をした。
数分後、真っ白なテーブルの上には可愛らしいケーキとオレンジジュースが置かれた。
ちゃんと「いただきます。」と手を合わせてからケーキを食べ始めた霧美ちゃんを見守り、私も淹れたばかりの紅茶を飲む。
霧「…ねぇ、うけ。」
ふと、霧美ちゃんが呟く。
…本格的に私の呼び名が【うけ】で決まりつつあるのは不本意だけど、
「なぁに?」と優しく聞くと、彼女は握り締めてたフォークをお皿に置くと少し悲しげにまゆ毛を下げる。
霧「…おにぃちゃま、きりみの事が嫌いなのかな。」
『どうしてそう思うのかな?』
霧「だってね…お家に居ても会えないの。お友達のおにぃちゃまは遊んでくれるのに……いっつもきりみは一人なの。」
ポツリポツリと小さく告げられた言葉に、私は思わずティーカップを置いた。
…そう言えば、昔コウも似たような事を言っていた。
“ーー…姉ちゃんはオレが嫌いなの?だから目も合わせてくれないの……?”
『…霧美ちゃん。』
あの時、コウの頭を撫でれなかった情けなくてバカな自分の背中を蹴飛ばしたい。
そんな思いを込め、私は涙を浮かべる小さなお姫様の頭を撫でた。
少し力加減を間違えたら傷付けそうで、そして柔らかく優しい存在を。
『それは違うよ。おにぃちゃまは霧美ちゃんの事が大好きなんだよ。』
だからこそ、苦手なモノを克服しようとしてるんだ。
…なんて、まだ小さなこの子には難しいかもしれないな。
『おにぃちゃまはね、今怪物と戦ってるんだよ。』
霧「かいぶつ?」
『そう。その怪物がおにぃちゃまに魔法をかけて、霧美ちゃんに見えないようにしちゃったんだ。』
やはり霧美ちゃんには難しかったらしく、少し不思議そうに小首を傾げる。
こればっかりは仕方ないなと思い、私はハンカチで彼女の涙を拭った。
『…大丈夫だよ、兄貴や姉貴はやる時ゃやるんだから。』
私は優しくそう呟き、霧美ちゃんに微笑んだ。
165人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
四條暁(プロフ) - 心結さん» 応援して頂きありがとうございます!これからも頑張ります(*`・ω・)ゞ (2021年5月15日 16時) (レス) id: e97b238670 (このIDを非表示/違反報告)
心結(プロフ) - お疲れ様です!今回も夢主と澪さんの会話などいろいろ楽し見ながら読んでます!これからも応援してるので頑張ってくださいね(*^^*) (2021年5月15日 15時) (レス) id: 59ce652171 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:四條暁 | 作成日時:2021年5月11日 17時