【はんぶんこ】前日譚 続き ページ20
その女性は“彼”の隣に居た、事件の
『私一人ですみません、彼は先に待ってます。』
「いや、わざわざありがとうございます。」
彼女は
町から少し離れた墓地、その奥に“彼”と弟が語り合っていた。
『零さん。』
彼女が声を掛け、歩み寄ると名を呼ばれた彼はこちらへ振り返った。
「…こんにちは、諸伏警部。」
「今日は弟の為にありがとうございます。」
少しばかりの間が空くと、彼女が「あ!」と声を上げる。
『やば!お線香忘れた!零さん、ちょっと戻るね!!』
「あ、待…。」
彼が引き留める前に彼女は走り出し、その場に残されたのは高明と彼のみ。
お互いに言葉を探り合っていると、不意に彼が小さく呟いた。
「…ヒロは、僕にとって大切な親友でありヒーローでした。」
彼の言葉に高明は耳を傾けた。
「周囲とは容姿が異なる僕にも手を差し伸べてくれて、僕に“光”を与えてくれた。」
ポツリポツリと弱々しく紡がれる言葉は、高明のあの日の気持ちを蘇らせた。
「…彼が居なかったら、僕は今とは全く違った人生を歩いてたかも知れない。そうしたら、彼女とも出逢えてなかった。」
その言葉の真意は高明には計り知れなかったが、その言葉で彼が一体どう言う状況だったのかは微かに理解した。
「景光も、よく君の話を聞かせてくれたよ。面白くて、一番の親友だと。」
高明の言葉に彼は小さく頷き、息を吐き出すと空を見上げた。
その目には小さな滴が見え、高明は見ないフリをした。
柔らかな風が二人の頬を撫でた、穏やかな午後。
今日もこの町は、人知れず守られた平和の中で人々は暮らしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…そして、それを遠くから見守る一人。
『ヒロさんも会いに行かれたら良いじゃないですか〜。』
ーー俺は良いんだよ。兄さんとゼロ、あんま話してなかったし。
男の友情の未知さに首を傾げた彼女は、目には見えずとも気配で“彼”だと分かるとそう声を掛けた。
そして、ガサガサと紙袋から取り出したたい焼きを一齧り。
『ヒロさんも、後で食べます?お供えしますよ。』
ーーおっ!良いねぇ!んじゃあと3つ用意してよ!“アイツら”にもあげたいから!
〜【はんぶんこ】前日譚 終了〜
165人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
四條暁(プロフ) - 心結さん» 応援して頂きありがとうございます!これからも頑張ります(*`・ω・)ゞ (2021年5月15日 16時) (レス) id: e97b238670 (このIDを非表示/違反報告)
心結(プロフ) - お疲れ様です!今回も夢主と澪さんの会話などいろいろ楽し見ながら読んでます!これからも応援してるので頑張ってくださいね(*^^*) (2021年5月15日 15時) (レス) id: 59ce652171 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:四條暁 | 作成日時:2021年5月11日 17時