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【はんぶんこ】前日譚 ページ16

落ち葉も枯れ果て、頬を撫でる風も冷たく指先は(かじか)む。


「にぃちゃん!」


予備校帰りの高明(たかあき)を見つけると、景光は後ろへ着いていた同級生も気にせず走り出した。

ガショガショとランドセルが走る振動で音を鳴らし、高明は立ち止まって振り返る。


「こら景光、お友達を置いていってはダメでしょう?それにちゃんと車が来てないか確認しないと…。」


口では注意する高明だが、その目は可愛らしく自分へ笑顔を見せる弟の姿に笑みを浮かべていた。

聞き分けの良い景光は「はぁーい!」と手を上げて元気良く返事する。

遠くの方で景光を呼ぶ同級生の声に彼は振り返り、手を大きく振って「またなーー!」と別れの言葉を紡ぐ。


「おや、今日はお友達の家にお邪魔してたんですか?」

「うん!」


高明はさりげなく弟を道路側から遠ざけ、その小さな歩幅(ほはば)に合わせて歩き出した。


「あのね!今日、体育のマラソン2位になった!あとね、にぃちゃんが教えてくれてた所がテストに出たんだよ!」

「そうですか、楽しそうで良かった。」


あまり感情を豊かに表す事が苦手な高明とは違い、幼い弟は全身で喜びを訴える。

同い年よりも思考(しこう)が大人びた高明にはその弟の笑顔が眩しく映り、ソッと目を細めた。

受け答えこそ冷たく思われるが高明が景光を見つめる眼差しは優しく、その声は慈愛に満ちていた。


「にぃちゃんは?今日どうだった?」

「今日…ですか。」


いつもなら「とても楽しかったですよ。」と返す高明だが、この時ばかりは言葉を(にご)らせた。

…と言うとの学校が終わった放課後、彼の下駄箱の中に可愛らしい手紙が入れられていたからだ。


ーー…所謂(いわるゆ)ラブレターなるソレだ。


内容は至ってシンプルな体育館裏で待ってるとの事、正直高明は内容を確認すると溜め息を吐いていた。


「にぃちゃん?」

「あ、あぁ…とても楽しかったですよ。」


勿論それは嘘ではない。

だが同時に、全てが真実とも言えたモノではなかった。

いくら同い年より大人びていてこの世の中の二枚舌(にまいじた)にも立ち向かっていける高明でも、他者から向けられる好意には敵わない。

科学や物理とは違い、答えが一つとは限らないからだ。

曖昧に噛み砕いて断っても斜め上の解釈をされ、極端に拒否したら逆恨みを買う。

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設定タグ:桜蘭高校ホスト部 , 名探偵コナン , 安室透/降谷零   
作品ジャンル:恋愛
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四條暁(プロフ) - 心結さん» 応援して頂きありがとうございます!これからも頑張ります(*`・ω・)ゞ (2021年5月15日 16時) (レス) id: e97b238670 (このIDを非表示/違反報告)
心結(プロフ) - お疲れ様です!今回も夢主と澪さんの会話などいろいろ楽し見ながら読んでます!これからも応援してるので頑張ってくださいね(*^^*) (2021年5月15日 15時) (レス) id: 59ce652171 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:四條暁 | 作成日時:2021年5月11日 17時

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