裏方を知る ページ29
コ「…Aさんさ、昨日の夜ってどっか行ってた?」
『昨日?昨日はホテルに帰ってすぐ寝たけど?』
努めて平然と答えると、二人は顔を見合わせた。
……悪いけど、ここは誤魔化させてもらう。
ばか正直に「昨日?あぁ、服部君助けた〜。」なんて言ってしまえばコイツらは私の服用してる薬にも追及するだろう。
それに、わざわざ恩着せがましく言いたくないし。
江戸川が再び口を開いた瞬間、病室のドアが横にスライドされた。
綾「気ぃつきはりましたか?」
入って来たのは綾小路さんと検温しにきた看護婦さんだった。
服「警部はん、あの短刀は?」
綾「鑑識に回さしてもらいます。」
……短刀?そんなの昨日あったか?
思わず首を傾げると、江戸川がソッと耳打ちをした。
コ「服部が襲われた時、切られた短刀が桜さん殺しの凶器なんだよ。」
『……マジか。』
何とも言えない気持ちになり、私は溜め息を吐く。
服「結界が出たらすぐ教えてや!証拠が足りひんのやら、この肩の傷も提供するで。」
『アンタ、わざと受けたワケ!?』
呆れと驚きで大声を出してしまい、看護婦さんに「病院内ではお静かに。」と注意された。
慌てて口を閉じる。
勿論、遠山さんも「え?証拠って?」と尋ねた。
服「あれが桜さんを殺害した凶器っちゅう証拠や。ホンマは直接、犯人の肌に触れたモンがあったら
『いや流石にそんなバカは居ないだろ。』
私のツッコミもスルーし、服部君は閃いたとばかりに顔を上げた。
服「バイクや!バイクがあったやろ!?あれは!?」
綾「あれは盗難車どす。」
服部君は看護婦さんに突っ込まれた体温計によって黙らせられ、綾小路さんの言葉にガックリと肩を落とした。
綾小路さんは一言「ところで。」と呟き、懐から紙切れを取り出す。
ソレは例の絵のコピーだ。
綾「この絵ぇ、何なんか解りますか?桜氏の自宅にあった【義経記】に挟んであったんですわ。」
服部君は江戸川と一瞬アイコンタクトをし、ゆっくりと首を横に振る。
綾「ホンマですか?」
もう一度綾小路さんが聞くと彼は無言で頷く。
それでも疑わしいのか綾小路さんは「まぁ、よろしおす…。」と置き、絵のコピーをしまった。
そして用は済んだとばかりに病室のドアを開けた。
綾「これに懲りて、大人しゅうしてる事ですな。」
チクリと釘を刺し、彼は帰って行った。
それに続いて他二人も挨拶も程々に病室を後にした。
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作者名:四條暁 | 作成日時:2020年10月8日 23時