誤魔化しと暴かれた内情 ページ25
『ぅッ……。』
その時、脳裏に映像が過った。
その生々しいまでのシーンに再び口元を抑える。
震える手で錠剤を取り出して半ば無理やり口に放り込んだ。
ソレを噛み砕き口内に広がった苦味を堪え、私はどうにか唾液で胃へ流し込む。
『……ッ……ふ…ぅ。』
数秒後には頭痛も治まり、私は安堵の溜め息を吐いた。
コ「Aさん、ソレ何?」
いつの間にか江戸川が私の足元に居て、握られたタブレットケースを指差した。
その目は疑いを持った色を宿していて、私は努めて笑顔を浮かべる。
『ただの薬だけど?』
コ「…何の薬?」
予想通り、江戸川は深く追及する。
『女子の日のお薬でーす。私、結構腹痛とか酷いんだよね〜。』
そう言ってしまえば途端に江戸川は顔を赤くし、側で聞いていた服部君は呆れ顔を見せる。
服「…せめて恥じらいを持てや。」
『別に良いじゃん?』
飄々と肩を竦めれば二人は溜め息を吐く。
その様子に私は笑みを深めた。
ーーこの錠剤は、謂わば“精神安定剤”だ。
と言っても違法なモノや中毒性のあるモノでも無い。
ゾディアックで正式に処方された合法のモノ。
……私のもう一つのお守り。
服「ほな行こか。」
コ「『え?』」
不意に服部君が階段の方へ向き、そう切り出した。
服「とぼけたらアカン。その為に桜さんの上着を探っとったんやろ?」
コ「あぁ、コレか。」
江戸川は不敵に笑って鍵束を手にする。
『うっわ、アンタそんな事してたの?』
少し、いやかなり引いた。
コ「確か桜さんの店は寺町通だったな。」
『はぁ…アンタらの行動力には驚かされるよ。』
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そしてそして、私達は寺町通の桜さんの店を訪れた。
家の主が亡くなったそこは何処か物悲しげで、私は言葉に出来ない悲しみに息を詰めた。
そのまま書斎へ向かい、二人は本棚やら至る所を手に取って調べてる。
手持ち無沙汰になった私は手元に置いてあった緋色の表紙の本を取った。
それは純文学より少し分厚く、読み込まれてるらしく微かに擦り切れた所も見受けられる。
『……義経記。』
ーーまさか、そんな事があるワケ。
あと少しで見えそうな【真実】を前に、私は息を飲んで本を開く。
……表紙の裏には、筆文字で【伊勢三郎】と書かれていた。
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作者名:四條暁 | 作成日時:2020年10月8日 23時