【ymcn→ytcn】The Imperial Boy ページ4
◇大学生パロ。ymさんが浮気します。R Sound Designさんの帝国少女という曲をモチーフに書きました。
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Cn.
恋人に、浮気をされた。
具体的な確証はない。強いて言うならば彼の態度がいつもと違うことくらい。
いつもは僕が何も言わなくても頻繁に寄越す電話もメールも今晩は1個も来なかった。それどころかいつもはコールセンター宜しく3コール以内には確実に出てニヤけた声を聞かせてくれるのに、今晩は代わりに『おかけになった電話番号は』の常套句を話す無機質な女性の声が流れてくる始末。
留守電にメッセージを残すのも馬鹿馬鹿しく思えてしまって、最終的に僕は何も言わずにスマホを閉じた。
帰ってこなかろうという予感はしつつ、それでもここで折れて先に寝てしまうのは負けのような、裏切っているような気がして、リビングで1人彼を待ち続けることにした。
結局一晩中起き続けることは出来なかったらしく、明け方に鍵が開く音で目を覚ました。何故か彼は息を切らしている。テーブルに突っ伏していた体を起こすと、キツイくらいの女性モノの香水が鼻腔を突く。
疑いは、ほぼ確信に変わってしまった。
重たい瞼を擦ればぼんやりと彼のシルエットが見える。
「おかえり、涼介」
極力優しく穏やかに、を心掛けてお出迎え。明順応が遅いせいで、未だ視界はぼやけたまま。
「ただいま侑李。…待ってなくて、良かったのに」
なんでそんな事言うの。いつもだったらありがとう、ごめんねって真っ先に言ってくれるのに。抱き締めてくれるのに。やっぱり後ろめたいことがあるからなの。少しでも期待した僕が間違いだったの。
安心するはずのその声は、ただ僕の不安を掻き立てるだけだった。
「僕が待ってたかったの。でも思ってたより遅くって寝ちゃってた」
ごめんね、と笑うと涼介もごめん、と笑って頭を撫でてくれた。
嗚呼、こうやって、この匂いの主にも優しくしたんでしょ。なんて、考える自分が酷く醜く思えてしまう。
こんな時でも、涼介の顔は憎いくらいに整っている。うっかりしたら泣けてしまいそう。
このままじゃだめだ。僕は一生、彼に縛られたままになる。寄生虫の如く依存して、棄てられてぼろぼろになる。
未来を見失った僕は、一つ或る大きな決断をした。
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作者名:不定期更新 | 作成日時:2019年3月15日 8時