噛み付くようなキスをして３ seven (ページ8)

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97.欲しいものページ8

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暫くの沈黙の後、怒号が飛んだ。

涼介｢ふっざけんなっ！｣

ガシャガシャと鉄格子を揺らす涼介。当然だが檻はビクともせず唇を噛んでいる。

伊野尾｢薮の話だと、この子には妖怪の力を最大限にしてくれる効果があるんでしょ？俺も欲しいのよ、もっと大きな力が。｣

悪びれる様子もなく、淡々と希望を語る伊野尾さん。この人も欲しているのか。強い力を。

涼介｢掟のこと、分かってて言ってんの？｣

裕翔｢そーだよ、そんなの、Aがオッケーするわけないでしょ。それとも掟破って無理矢理するつもり？｣

額に青筋を立てるふたりとは対照的に、コロコロと柔らかい笑みを浮かべ、わたしを見つめる伊野尾さん。真意が読めない。

伊野尾｢だーかーら、掟をちゃあんと守って、同意を得てから頂くつもりだよ。ねぇ、伝説のお嬢さん。｣

どくり、緊張感に襲われ、背筋がゾクッと冷えた。

何だかんだと涼介も裕翔もわたしのことを尊重してくれていた。だから信じて委ねていられたのだ。でも、この人はそうじゃない。

｢…あなた、わたしのこと好きでもなんでもないのに…？｣

震える声で問い掛けた。小娘の青くさい質問に彼は一瞬目を見開いてから、目を細めた。

伊野尾｢あは。俺、女のコはみんな好きだもん。でもキミは特別に可愛いし、閨では甘い言葉のひとつでも囁いてあげるよ。｣

誠意も真摯さも皆無。へらへらとした苛立つ答えに涼介達の方から盛大な舌打ちが聞こえた。

｢で、伝説の娘なんて、嘘っぱちかもしれないじゃないっ。わたしフツーの女のコだもんっ。みんなが勝手に勘違いしてるだけだしっ。｣

伊野尾｢いいよ、試してみて効果が無きゃ仕方ない。フツーに楽しめたらそれはそれでちゃんと納得するからさ。｣

わたしの純潔をサプリメントの試供品みたいに軽く扱う伊野尾さん。今更ながら涼介や薮さん達が渋い顔をしていた理由が分かった。

裕翔｢…Aは極上の血を持つ娘。バンバイア族の宝だ。あんたが食い散らかしてきた安い女共とは違うんだよ。｣

涼介｢そうだ、Aは簡単に手を出していい女じゃない。｣

今にも噛みつきそうな涼介と裕翔。伊野尾さんは檻に近づき、余裕の顔で言い放った。

伊野尾｢一回くらいいいじゃん。減るもんじゃないし。｣

九つの尾を持つ狐の妖怪は、マシュマロみたいに柔らかく笑った。

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