噛み付くようなキスをして３ seven (ページ27)

今日:6 hit、昨日:10 hit、合計:55,412 hit

115.戦いの終焉後 …追憶… ページ27

伊野尾side

＿＿＿＿翠を失ったあとも戦争は続いた。

殆どの土地が焼け野原になった。多くの妖怪達が命を落とし、絶滅した種族も少なくなかった。大きな犠牲を払い、漸く終焉を迎えたのは十年以上も後のことだった。

涼介『新しい妖魔界を作ろう。
今度こそ、平和で穏やかな妖魔界を。』

妖魔界の新しい代表はバンパイア族の若き少年だった。亜麻色の髪の隙間から覗く瞳は正義感に溢れ、やさぐれていた俺には眩し過ぎた。

涼介｢九尾狐の伊野尾さん、雲外鏡の薮さん、猫又の八乙女さん。どうか妖魔界の治安維持に力を貸して下さい。｣

それまで妖魔界全てを単独で支配していたバンパイア族。しかし彼ら種族は絶滅寸前にまで減ってしまったため、妖魔界を三分化し、その一国が我々九尾狐が統べることになった。

伊野尾｢んー、よろしくねぇ。｣

三国の長は同盟を結び、一旦は平和が訪れた妖魔界。

生き残った九尾狐族は少しずつ増えていたし、他の種族とも付かず離れず、それなりにうまくやっていた。

その間、歳を重ねた俺は大人の階段を登った。

妖魔界にも綺麗なメスはいる。セクシー系もキュート系も知的系も。俺の地位とビジュアルをもってすれば選り取りみどり。知らなかった世界は魅惑的で俺を虜にした。

もう、いない翠のことは忘れたい。

女人と肌を重ねる行為は至福だった。異性の肉体は柔らかくて触り心地もよくて、何より爽快でキモチいい。過去の嫌なことを忘れさせてくれた。

このままチャラチャラ平和に過ごしていくのも悪くないと思っていた。

なのに…

伊野尾｢なのに、急にキミが現れっからさぁ。閉じ込めてたもの、色々思い出しちゃったよ。｣

俺は結局、忘れられてなかったんだ。

死んでいった仲間のことも。大好きだった翠のことも、ずっとずっと＿＿＿＿

・