噛み付くようなキスをして３ seven (ページ22)

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110.怨嗟と憂いページ22

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そこまで話した伊野尾さんは天を仰ぎ、はぁ、と大きく息を吐いた。

｢そ、それで翠さんは…？｣

伊野尾｢それっきりだよ。遺体も見つからなかったから、辱められた挙句に下等妖怪共の餌になったんだろうと思ってる。｣

｢そんな…。｣

悲痛な想いで涼介達の方を見やる。苦々しい顔のふたりは力なく言葉を発する。

涼介｢…昔、はぐれ者のバンパイア達が好き放題やっていた話は聞いたことがあるが、そこまでの具体的な情報は知らない…。｣

裕翔｢そうだよ、それにその頃の長は涼介じゃなくて先代の…。｣

伊野尾｢んなの詭弁だろ。｣

裕翔が言い終わらないうちに言葉を被せた伊野尾さん。怒りに満ちた声に驚き私達三人はビクッと肩を上げた。

伊野尾｢聞いてないから、知らないから、無かったことになるのか？そもそもお前らの一味が同族を統率しきれなかったのが根源だってのに。随分と浅慮な後継者だな。｣

｢けどっ、同族とはいえ、涼介達が悪いわけじゃっ。｣

口を挟んだギリッ、わたしに鋭い眼光が注がれる。血走った瞳。そこには深い怨嗟の色を含んでいた。

伊野尾｢人間界だって裏切り者はまるごと粛清される。しくじった結果、一族根絶やしになった武将なんて山ほどいただろ？連帯責任ってやつだよ。｣

確かに敗北した側は親子供兄弟まで手打ちにするような理不尽な行為が普通に行われていた時代はあるけれど…

｢………………。｣

言葉を失うわたし達。伊野尾さんは少し間を置いてまた口を開く。

伊野尾｢今でも夢に見るよ。翠が無惨に死んでゆく夢を。きっと俺に復讐してくれ、って言ってるんだよ。｣

潤んだ瞳は憂いを帯びていた。言っていることはむちゃくちゃだけど、伊野尾さんの痛いくらいの想いが共感の涙を誘ってくる。

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