103.伝書鳥 ページ14
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…ガシャ、ガシャッ
「あー!どーすりゃいいのよっ!部屋から脱出すら出来ないなんてっ!」
伊野尾さんは外出しており、わたしはひとり部屋に残されていた。なんとか外へ出ようと試みるも扉はビクともしない。妖力で施錠されているのだろう。緩い顔して抜かりのない男だ。
気づけばこの屋敷に来てからもう数日経過している。
彼は一体いつまでこんな我慢比べを続けるつもりなのだろうか。
「はぁ…もう。やだ。」
涼介と裕翔は無事なの?不安しかない。伝説の娘だとか言われてるのに、何も出来ない自分がもどかしい。苛立ちが募り過ぎてどうにかなってしまいそう。
ピチチッ
荒んだ心に可愛い鳴き声と柔らかな気配が入った。
「…あ、シマエナガちゃん。あなたも屋敷内に居たの?」
ふわふわと目の前を浮遊する白い鳥。この子は出入り自由のようだ。雪の結晶のような淡い塊を目で追いかける。
『A、聞こえる?』
「えっ。」
不意に愛しい人の声がして驚愕した。キョロキョロ辺りを見回すけど姿はない。どこにいるの?
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作者名:不眠症の羊 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/isut/ano/
作成日時:2020年11月28日 12時