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あれからミンギュはとても気まずそうに帰ろうと言った。
家に帰ってからもあの光景が頭から離れなくてなにも考えられなかった。手こそ繋いでいなかったけど、楽しそうに笑い合うふたりはまるで恋人のそれ。
ミンギュはずっとわたしの様子を伺っていて、耳の垂れた犬みたいだった。
「ヌナ、元気出して…」
『そういうミンギュがいちばん元気ないよ』
「だって…」
『大丈夫だよ、最初からわかってたことだから』
「ヌナ…」
『ミンギュ落ち込まないで』
「なにかの間違いかもしれないし、まだ付き合ってるなんて決まったわけじゃ…」
『ミンギュ』
わたしがミンギュを遮って名前を呼ぶとぴたりと話すのをやめた。ほんとに飼い主に従う犬みたいで可愛い。
『いいんだよミンギュ。気にしてない…って言ったら嘘になるけど、わたしにはミンギュのほうが落ち込んでるように見える』
「……ヌナはなんでそんな冷静なの?」
『逆にミンギュはなんでそんな落ち込んでるの』
「だってヌナが…」
『あの人のこと好きって?』
「うん…」
ミンギュがあまりに悲しそうだから、なんだか笑ってしまう。
『わたしは大丈夫だから、あの人がわたしと仲良くしてた理由だって初めからわかってたし、』
そこまで言って切なくなってきた。わかってた、彼がわたしに近付いた理由も、わたしに優しくした理由も。
ただのゲームに過ぎなくて、わたしはその駒でしかないってこと。なのになんでこんな心臓が嫌な音を立てるんだろう。
全部わかってた、なのに、あの人の優しさがひょっとしたら本物なんじゃないかって。
そんなこと、考えてた自分が馬鹿みたい。
『ミンギュ、わたしもう寝るね』
ご飯を食べて、お風呂に入ったらいつもはソファでミンギュとテレビを見たり雑談をするんだけど、今日はもう早々にベッドへ入ろうと思った。
起きていると思い出してしまいそうだから。
「ヌナ」
『ん?』
「一緒に寝る」
『…ふふ。いいよ』
垂れ下がった耳が見えたミンギュはまた布団を持ってわたしの部屋に来た。
『歯磨きした?』
「したよ」
『トイレ済ませた?』
「もう。小さい子どもじゃないんだから」
そう言いながらも嬉しそうなミンギュは昨日と同じくわたしより低い位置で横になった。
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f - このお話何回も読んでるけど毎回キュンキュンが止まらなくて本当に大好きです…!素敵なお話ありがとうございます! (2021年7月30日 15時) (レス) id: f47bd03f70 (このIDを非表示/違反報告)
hanihaniてんし - キュンキュンしました!ハニペンとして、とても嬉しいお話でした!ありがとうございます~! (2019年12月31日 16時) (レス) id: 528189e27f (このIDを非表示/違反報告)
ににに(プロフ) - ウォヌ ペンとしてちょっぴり切なかったけど、めっちゃきゅんきゅんしました (2019年8月28日 0時) (レス) id: 7eaeb151a5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆな子(プロフ) - 私が評価ボタン押したら点数?が10になりました!!星全部埋まるってスゴい人気なんですね♪私もお話書いているので、参考にさせてください!!お話、最高です!! (2019年8月17日 14時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
ymu(プロフ) - ボボベイビーさん» コメントありがとうございます。陰ながらの応援、ありがとうございますとても励みになりました^^ジョンハンさんとの番外編、楽しみになさっていてください! (2019年7月31日 17時) (レス) id: 89080e4533 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ymu | 作成日時:2019年7月8日 8時