その2 ページ8
『ユーシェンは?』
「奴なら出掛けている。2、3日は帰らないぞ」
『なんてタイミングの悪い…』
看病できる人間がいないじゃないか。
「おいA、これぐらいで心配することはないぞ」
『ぶっ倒れてたら誰だって心配するでしょ』
「だが…」
「持ってきたよ、ファンクビート」
キィ君が水と共に薬を渡す。
『ありがとうキィ君。ファンクビートも無事だったし、そろそろ寝て大丈夫だよ』
「でも…」
『大丈夫。私が看てるから』
「Aが?」
『ユーシェンとおんなじとこで学んできたんだよ?今は裁縫師でも、このぐらいなら大丈夫。安心して』
「分かった。ありがとう。おやすみ、A、ファンクビート」
『おやすみ』
「ああ」
部屋を出ていくキィ君。ずっとファンクビートを心配してて、疲れただろうし。
『と、いうわけで私がついてるから』
「不安しか感じないのだが?」
『失礼な』
むっとファンクビートを睨むと、彼は珍しく微笑んだ。
「だがまぁ、助かったぞ、A。来てくれて」
『礼を言うのが遅い』
「そう言うな」
『…そうだ、ファンクビート。白衣なんだけど……寝たの?』
ベットに横たわる彼はいつの間にか寝ていたようだ。すぅすぅと寝息をたてる彼のおでこに、氷嚢を乗せてやる。
『全く……無事て良かった』
倒れているファンクビートを見たとき、心臓が止まるかと思った。
『本当に、心配したんだからな』
そっと、彼の包帯が巻かれた左手を握る。
隻眼で隻腕。男にしては華奢な彼を初めてみたとき、満身創痍という言葉が浮かんだ。それと同時に、壊れてしまいそうな儚さを感じた。
起きて喋っているときの彼は、そんなこと感じさせない元気で陽気な人間だが、こうやって静かに寝ていると、まるで別人のようだ。
「Aは相変わらず優しいな」
と、寝ていたはずのファンクビートがいきなり喋った。
『ふ、ファン!?起きてたの!?』
「氷嚢で起きた。冷たい」
『えぇ……』
左手は繋いだまま、器用に上体を起こすファンクビート。
「ユーシェンだとこうはいかない。あーだこーだとグチグチ言い続けるからな」
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ひつじ(プロフ) - ねこまりおさん» わぁあありがとうございます!鉛姫シリーズの作品が増えていくことを、私も1ファンとして期待してます… (2021年2月14日 13時) (レス) id: 2dde8895f0 (このIDを非表示/違反報告)
ねこまりお - とっても素敵な作品ですね!鉛姫シリーズなんかは作品数が少ないので嬉しいです。無理をなさらず頑張って下さい!応援します! (2021年2月13日 18時) (レス) id: b42424beae (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - ひつじさん» いえいえ!とっても楽しみにしています、少しずつで良いので頑張ってください!応援しています (2021年2月9日 17時) (レス) id: 27a2b67915 (このIDを非表示/違反報告)
ひつじ(プロフ) - 本当ですか!!!大変失礼しました!!ご指摘ありがとうございますすぐ直します!! (2021年2月9日 16時) (レス) id: 2dde8895f0 (このIDを非表示/違反報告)
彼方(プロフ) - オリジナル作品のタグがついてしまっていることと名前の変換がされていないことを報告させていただきます。鉛姫の夢小説が少ない中、その数少ない作品の一つである貴方の作品に私は期待しています。頑張ってください!もし不快に感じてしまわれたらすみません。 (2021年2月9日 0時) (レス) id: 27a2b67915 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひつじ | 作成日時:2021年2月8日 0時