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1人、身寄りのない娘がいた


生まれて間もなく捨て置かれた娘はよく働いた。


小さく白いかかとを土で汚しながら懸命に働いたそうな



『お前は俺たちが育ててやった。
村の者によく尽くせ』



娘は幼い頃から聞かされるその言葉に答えるべく、日が登ると同時に畑に向かい、家屋の掃除をし、人々から浴びせられる辛い言葉にめげずに働いた。



そんな娘にも幸せはあった。



小さな幸せ



山の中腹にある祠の掃除の時間


爽やかな風が吹き、近くには様々な色の花が咲いていた。



娘は祠を綺麗にし、村の人々の健康を祈り、側に座ってひと息つく時間が好きだった。


たまに花を摘んでその香りを楽しんだりもした。



ある日、いつものように仕事を終え、ひと息ついているところに男が現れた。


背丈が大きく、なんと眼と腕が四つずつある男であった。


村では見かけない男に会釈をし、どこから来たのですか、と尋ねた。



男は低く響く声で答えた。



『許可なく尋ねるな。
とって食ってしまうぞ。』



娘はころころと鈴を転がすように笑って言った。



『私を食べてもきっと美味しくありません。』



男はふん、と鼻を鳴らして娘の隣に腰かけた。



『確かにお前は不味そうだ。
どうしてそんなに貧相なのだ。』



娘は汚れた足先を隠して答える



『きっと私が悪い子だからです。
村のみんなはそう言います。悪い子だから親が捨てたのです。』



口元は笑っているのに今にも泣き出しそうな娘の瞳に気付き、男は興醒めだと言わんばかりに立ち上がった。



『泣くくらいなら村の奴らを殺してしまえ。
そしてそいつらを食えばいい。
俺が殺して回ってやろう。』



娘は男の言葉に顔を上げ、より一層悲しそうに瞳を濡らした。



『そんなことはいけません。
村の人々は私をここまで育ててくれました。
恩を返している途中なのです。』



『ではどうすればお前は笑うのだ。
俺の前で涙を見せるな。本当に食い殺してしまうぞ』



娘は心底腹が立っているという顔をした男を見てくすくすと笑い出した。


そして言う。


2人の運命が絡み合い始めた最初の言葉



『貴方がまたこうして話してくれたら、私は二度と悲しいなどとは思わないでしょう』

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作者名:夕暮れ | 作成日時:2021年7月9日 21時

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