海の見える街 4 ページ7
途中、見つめられていることに気づいたのか風磨が顔を上げた。
「なに?」
わたしはとっさに顔を逸らした。
「なんでも」
「………ふーん。」
それから彼はまたカメラに集中する。
妙に緊張してしまった。
同い年なのに、随分わたしなんかより人生経験を積んで大人びているような、そんな風に見えて。
「………わたしもなにか欲しいな」
電気を消して布団に入ってから、ふとわたしはそう、誰に言うでもなくぽつりと呟いた。
彼に語りかけた訳でもないけど、返事もない。
まさかもう寝ちゃった?と少し体を起こしてベッドから布団を覗き込むと、ぱちっと目を開けていた風磨と目が合った。
「………欲しいって、何を」
仕方なくといった風に彼はそう尋ねる。
彼が目を逸らしたから、わたしももう一度ベッドに寝転がる。
「何か。風磨みたいに打ち込める趣味とか、あとは叶えたい夢とか。
わたしには何もないからさ。
目的もなくなんとなく生きてるの。」
ぼんやりと天井を見つめていた。
「………俺も別に、カメラは趣味じゃない」
「あ…ごめん。カメラは夢?カメラマンとか?」
ふっと、風磨が鼻で笑うように自嘲した。
「もっとちげーよ。
カメラ、嫌いじゃないけど、好きでやってる訳でもねえし」
「………どういうこと?」
それきり返事は返ってこない。
わたしの右側にさっきまであった体温が感じられないみたいだった。
寝ちゃった?………いや、きっと違う。
何か、答えたくないみたいに。
「………ねえ」
「早く寝ろ」
やっぱり起きてる。
だけどもう、それ以上問いかける勇気も、理由もなかった。
「………おやすみ」
「おやすみ」
しばらくわたしはそれが気になって、変に冴えてしまった目で天井を眺めていた。
知らない部屋みたい。
彼が隣で寝ているだけで。
しばらくして彼の寝息が聞こえてきた頃に、わたしもまどろんで、気づいたら朝になっていた。
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mana. - マゼンダさん!もうお話を描かれるのはやめてしまったんでしょうか?とっても寂しいです。いつかまた読める時が来ることを祈ってます!待ってます!! (2021年8月29日 5時) (レス) id: bff4af5f5b (このIDを非表示/違反報告)
sooooo - マゼンダさんの作品いつも楽しく読ませてもらってます!続きが気になりすぎます、、頑張ってください! (2020年4月9日 23時) (レス) id: 0f0f07dd15 (このIDを非表示/違反報告)
愛莉(プロフ) - マゼンダさんのお話大好きです!毎回マゼンダさんのお話が濃くて吸い込まれていきます!!お話書くの上手ですね!いい意味で自然と涙が出てきます!!このお話の続き気になります!頑張ってください!!! (2019年7月3日 19時) (レス) id: 8f456c3f46 (このIDを非表示/違反報告)
マゼンダ(プロフ) - 有紗さん» お返事遅くなりすみません!わわ、全部読んでくださったんですかありがとうございますすぎます(;_;)少しでも感動していただけていれば嬉しいです頑張ります…! (2019年3月14日 0時) (レス) id: f72ec701de (このIDを非表示/違反報告)
マゼンダ(プロフ) - 夜桜さん» お返事遅くなりすみません!更新滞ってしまってますが必ず書ききるのでよろしくお願いします、! (2019年3月14日 0時) (レス) id: f72ec701de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マゼンダ | 作成日時:2018年12月16日 21時