別れと再会 3 ページ31
「そう。寂しくなるわね」
元々風磨の荷物なんて無いに等しかったから、彼がいなくなっても部屋にはさして変わり映えはしなかった。
それが妙に悲しくて、
ひとりで眠った昨日の夜がなんだか怖くて、
わたしはもう風磨のいる部屋に、生活に少しだけ慣れてしまっていたのだなと気づかされる。
「挨拶もなしに出てくなんて、ほんと失礼なやつだよね、最初から最後まで」
私は母に何も悟られないよう、そんな冗談を言って笑ってみせた。
ほんとうは理由もなく寂しくてたまらなかった。
「まあタイミングはよかったんじゃない。
明日健人くんが帰ってくるんだから、寂しくないじゃない」
「………うん。そうかもね。」
久しぶりの母と2人だけの朝食を済ませて、やることもなくスマホのロックを開いたり閉じたりする。
そういえば風磨の連絡先も知らなかった。
連絡手段すらないんだ、私たち。
昨日まで健人でいっぱいだった頭の中が、こんどは風磨のことで溢れかえってしまって。
それでもその日、やっぱり風磨は帰ってこなかった。
海へ何度行っても、そこには風磨に出会う前までの退屈な青が広がっているだけだった。
風磨に帰って来てほしいと思っているかどうかすら私はよくわからなかったけど、とりあえずどこへ行ったのかぐらい教えてよ、とは思った。
翌朝、なんとなく重たい足取りで駅へ向かって、11時につく便で帰ってくる健人を寂れた人のいないホームで待つ。
風磨が来てから聴いていなかった音楽を聴くためにプレイヤーを取り出して、いつもの曲を聴く。
健人の弾くピアノ。
それは私が嫌がる健人に無理やり頼み込んで録音させてもらった、私の一番好きな曲。
夏と海の曲。
録音させてもらったものだから、雑音や終わった後の私の拍手なんかも一緒に録音されてしまっているんだけど。
それすら愛おしくて、彼と離れてからは日課のようにこれを聴いていた。
風磨が来てからそういえば1人でいる時間も少なくて、自然と聴かなくなってしまっていたものだった。
1時間にひとつしかない電車の時刻表を眺めながら褪せた赤色の電車を待つ。
踏切が電車の到来を告げながら閉まる。
それからゆっくりと一両編成の電車がホームに入って来て、プシュウ、と音を立ててドアが開いた。
中から見慣れた顔が姿をあらわす。
照れたように小さく手を振りながら。
「健人！」
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mana. - マゼンダさん！もうお話を描かれるのはやめてしまったんでしょうか？とっても寂しいです。いつかまた読める時が来ることを祈ってます！待ってます！！ (2021年8月29日 5時) (
レス) id: bff4af5f5b (このIDを非表示/違反報告)
sooooo - マゼンダさんの作品いつも楽しく読ませてもらってます！続きが気になりすぎます、、頑張ってください！ (2020年4月9日 23時) (レス) id: 0f0f07dd15 (このIDを非表示/違反報告)
愛莉(プロフ) - マゼンダさんのお話大好きです！毎回マゼンダさんのお話が濃くて吸い込まれていきます！！お話書くの上手ですね！いい意味で自然と涙が出てきます！！このお話の続き気になります！頑張ってください！！！ (2019年7月3日 19時) (レス) id: 8f456c3f46 (このIDを非表示/違反報告)
マゼンダ(プロフ) - 有紗さん» お返事遅くなりすみません！わわ、全部読んでくださったんですかありがとうございますすぎます（；＿；）少しでも感動していただけていれば嬉しいです頑張ります…！ (2019年3月14日 0時) (レス) id: f72ec701de (このIDを非表示/違反報告)
マゼンダ(プロフ) - 夜桜さん» お返事遅くなりすみません！更新滞ってしまってますが必ず書ききるのでよろしくお願いします、！ (2019年3月14日 0時) (レス) id: f72ec701de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：マゼンダ
| 作成日時：2018年12月16日 21時
