she/sea ［Fuma.K］

出会った理由 3 ページ15

「前世の記憶があるって言ったら信じる？」







風磨が真面目な顔でそう言うから、わたしは思わず目を見開いて、静止するほかなかった。




「………なんとか言えよ」




前世、なんて、ただの夢。

空想。おとぎ話。




「………本気で言ってる？」




本気だって、彼の目を見たらわかった。

わかったけど、それ以外言葉が出てこなかった。





「本気だよ」




彼の透き通るような薄い茶色の瞳から目が離せない。




「………写真、好きでやってるんじゃないって昨日言ったろ」




うん、とわたしは頷く。

昨日の夜、その意味を彼は教えてくれなかった。





「………俺は記憶が消えるのが怖いんだよ」




「……………」




「なんとなくそんな気がしてたけど、今になって確信した。

前世の記憶があるのは俺だけで、他の誰も俺のことを覚えてねえってこと」





だからそんなに、悲しそうな目をしているの。

仮に彼の話が本当だったとして、風磨は前世のことを全て覚えていて、母親も父親も、友人も恋人も子供も覚えているのに、現世でその人の生まれ変わりに会っても、その人は風磨のことを覚えていなくて、彼らにとっては風磨は他人でしかなくなってしまっているということ。




それって、きっととても悲しい。

いや、私にはわかりっこない感情だけれど。






「………一番、俺のことを覚えていてほしかった人も、俺のことなんて覚えちゃいなかった。」




「……………」




「写真ばっかり撮ってた意味がわかったんだ」




首からいつものように下げられたカメラ。

よく見ると、ストラップは使い古されてほつれていて、カメラの角には擦れた傷が無数についている。



きっと無意識に、彼の細くて長い綺麗な指がその傷を、庇うように撫でた。









「俺はただ残したかったんだなって気付いた」

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