出会った理由 2 ページ14
ぼうっと海を眺めていると、不意にあの時と同じ風が吹いて、同じ波の音が響いてくる時がある。
その瞬間、俺の身体に全ての記憶がのしかかってきて、彼女の冷たい手が触れるようだった。
「………いまぼーっとしてたね」
隣で何をするでもなくぼーっとしているやつにそう言われて我にかえる。
何回めの残像だろう。
この2日間でわかったことがある。
それは、俺にとって想定外で、どうしようもなく悲しい現実。
ああでもそっか。
君にとっては想定内のことだったか。
「……………なぁ」
「なに?」
彼女の無垢な笑顔が俺に向けられる。
俺は後ろめたさと悲しさで掻き乱されたような複雑な心でどうにも動けなくなるんだ。
何も知らない。
彼女は何も知らない。
「……………俺、海もない街で育ったのにずっと海が好きでさ」
彼女はまたその話か、とでもいうように俺から目を逸らして前を向き直った。
「だから俺、ずっと前に海のそばの……そうだな、
この街みてぇなとこで育ったんじゃないかって気がする」
「どういうこと?」
俺はその言葉を無視して大きくひとつ、深呼吸をした。
鼻の奥をつんとつく潮の香りで、またあの光景が蘇ってきそうで、俺は急いで息を吐き出した。
「………前世の記憶があるって言ったら、信じる?」
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mana. - マゼンダさん!もうお話を描かれるのはやめてしまったんでしょうか?とっても寂しいです。いつかまた読める時が来ることを祈ってます!待ってます!! (2021年8月29日 5時) (レス) id: bff4af5f5b (このIDを非表示/違反報告)
sooooo - マゼンダさんの作品いつも楽しく読ませてもらってます!続きが気になりすぎます、、頑張ってください! (2020年4月9日 23時) (レス) id: 0f0f07dd15 (このIDを非表示/違反報告)
愛莉(プロフ) - マゼンダさんのお話大好きです!毎回マゼンダさんのお話が濃くて吸い込まれていきます!!お話書くの上手ですね!いい意味で自然と涙が出てきます!!このお話の続き気になります!頑張ってください!!! (2019年7月3日 19時) (レス) id: 8f456c3f46 (このIDを非表示/違反報告)
マゼンダ(プロフ) - 有紗さん» お返事遅くなりすみません!わわ、全部読んでくださったんですかありがとうございますすぎます(;_;)少しでも感動していただけていれば嬉しいです頑張ります…! (2019年3月14日 0時) (レス) id: f72ec701de (このIDを非表示/違反報告)
マゼンダ(プロフ) - 夜桜さん» お返事遅くなりすみません!更新滞ってしまってますが必ず書ききるのでよろしくお願いします、! (2019年3月14日 0時) (レス) id: f72ec701de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マゼンダ | 作成日時:2018年12月16日 21時