彼女の幸福理論大人組 (ページ48)

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38話ページ48

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激しい運動は控える様にと言われた。

だが明後日に試合を控えている今、何もしない訳にはいかない。

窓を見ると空は少し暗くなっていた。

「…散歩にでも行こうか。」

軍服から私服に着替える。

上着を着て、自室を後にした。

ーーーーー

薄暗い夜道を歩く。

すると頬に何か水滴が付いた。

ｻﾞｧｱｱ…

「ぅ…雨か…」

生憎傘は持っていない。

それに追い打ちを掛ける様に、雨が止む気配は無く酷くなる一方だった。

顔に強く打ち付ける水滴にやがて目を開けて居られなくなった。

体に付いた水滴が滴って地面に落ちる度に頭の中の何かが喪われていく気がした。

「…あ、れ……」

頭を抱える。

「…俺…何、で…真・エイリア学園…何か、を…？

…それ、に…“兄さん…って、誰”…？」

『本当に何にもかも忘れたのか…！？

兄さんは、お前の…！！』

「A！！」

突如“誰かの名前”を呼ぶ声が聞こえた。

それと同時に幻聴は聞こえなくなった。

その声の持ち主の人が俺に傘を刺してくれ、体から水滴が沢山滴った。

「A…っ！！」

濡れているのも気にせずその人は俺を抱き締めた。

長い青緑色の髪が頬を擽った。

訳が分からず俺は聞く。

・

「…俺は…誰？

貴方は、何者…？」

「…！？」

その人の顔は見る見る内に真っ青になり、俺の肩を激しく揺すった。

「おい！！大丈夫か！？」

「っ…」

その人は目に涙が溜めていた。

自然と体が動いた。

「…涙何て、流したら駄目ですよ。

貴方の思いまで流れてしまう。」

その人の目元に溜まっている涙を指の腹で拭った。

するとその人は余計に号泣し始めた。

俺が焦っていると背中に回されていたその人の腕がキュッと締まった。