【D!】夏に溺死 (ページ9)

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世間一般的な青い春は、きっととっくのとうに過ぎてしまったのかもしれない。否、もう過ぎてしまったのだと思う。けれど、それは一般的な人達の話。例え、青い春が終わったとしても、私と彼の青い夏が、また今年もやってくる。
春が過ぎたら、夏が来る。夏も過ぎたら秋が、秋が過ぎたら冬が来て、冬が来たら春が来る。そしてまた、春が過ぎて、2度目の夏が、やってくる。

青春、なんて。それはもう学生時代の思い出話だとは思っていたのだけれど。来年、きっとまた、青春はやってくる。青い春も、夏も、秋も、冬も。彼が居るのなら、どんな季節でも私にとっては全て青いのだろう。

青い春は、何度もやってくる。私は、そう思っている。

「…あっついし、帰ろか」
『…暑いけど、手繋いでもうたらあかん？』

今くらいは、あの頃を思い出して。なんて。何年も前の、青い夏の2人の思い出。驚いたように目を見開いた彼は、くすりと笑みをこぼして、1度手を離したかと思えば、指を絡ませてまたギュッと手を握る。

学生時代もあったよね、こんなこと。なんて、過去のことを思い出す。あれこそが、私にとって青春と呼べる時代で、青春だと感じる時間だったのだろう。一緒に地元の夏祭りに行って、友人たちとわいわいとはしゃぎながらも、影でこっそりと手を繋ぎながら歩いて、恥ずかしさを感じながらも、それ以上に嬉しさがあったあの頃。自分の手と全然違うサイズ、ごつごつとした指が、私と彼の違いをあの頃よりも良く表している。

ふわり、風が吹く。ほんの一瞬、緑の葉が揺れた。例え夜でも、暑さを感じるその風は、青い夏がやって来ていることを意味している。

"赤のムシトリナデシコの、花言葉は───…。"

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