キレイ ページ1
フリットウィック先生との練習の後、Aは空き教室で再びパトローナスを出した。
銀色の靄が、先程のバイコーンを形作る。
バイコーンは、ジッとこちらを見つめている。
「にしても、バイコーンか。バイコーンって確か、ユニコーンと違って……」
「不純物を司るから、汚いと言いたいのかね？」
ふと声が聞こえて、彼女は慌てて辺りを見回した。
しかし、Aとパトローナス以外の人影は無い。
それよりも、今の声。あの、言峰綺礼の声に似ていた。
「こちらだ」
「えっ、貴方……」
声の主は、彼女の目前のパトローナスである、バイコーンだった。
守護霊って喋るものなの？
「守護霊って喋るものなんですか？」
「普通喋りはしない。こうして話せているのは、君の魔力が高いせいであろうな」
人間の様に、スラスラと喋るバイコーン。
Aは戸惑いを隠しきれない。
「して、先程の質問だが、世は不純物を司る生き物だから汚いと言いたいのかね？」
「え、あ……そうじゃなくて。私、そう言った経験が無いから、バイコーンって無いんじゃないかなって」
「そう言う意味か。世は別に、君が不純物でなかろうが関係ないがね」
ため息を吐く様に言う、バイコーン。
言葉の端々に、人間味を感じるバイコーンだ。
「貴方、なんだか綺礼に似てる」
「キレイ？」
「私の父親代わりみたいな人よ。口調もなんだか似てるし……。
あ、そうだ！ 名前無いなんて失礼よね！
キレイ、でどうかな？」
目を輝かせながらそう言うA。
バイコーン−−キレイは、微かに笑った様に嘶く。
「守護霊に名前を付けるなど、君くらいのものだぞ」
「そうなの？」
「そうだ。しかしキレイか……悪くない」
君の名前は？ とキレイに聞かれ、彼女は名乗るのを忘れていたと言った。
「私の名前は、A・マトウよ。
これからよろしく、キレイ」
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作者名：カフェラテ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/shazam03271/
作成日時：2020年9月5日 10時
