蜂蜜入りアールグレイの夢想曲 Ⅱ【twst】 (ページ14)

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びくり、と図星を突かれたコニーが肩を揺らす。

先程から彼女はカタカタと小刻みに震えてはいるものの、おずおずと上を向いたその顔色は……蒼白ではなく紅潮だった。

そう、彼女がその顔に湛えているのは恐怖ではなく、底知れない恍惚だった。

「……何もかもお見通しなのね。」

そう呟いたコニーは、ほぅ……と嘆息し自らの赤らんだ頬に手を添える。

見目の麗しさも相俟ってその姿は非常に画になるが、深赤色の瞳は煮詰めた飴のようにどろりと蕩けていた。

一体彼女は何を見たのか……否、魅入られたのか。

数刻前、一同も知っての通り宝物庫に潜入したジェイドはカリムに『かじりとる歯(ショック・ザ・ハート)』を行使した。

初めて目にする恋人のユニーク魔法に釘付けにされるコニーを見据えたジェイドは不意に人畜無害そうな笑みを浮かべたかと思うと、

“……貴女のこと、信じていますよ。”

金縛りに遭ったかのように動けないでいる彼女の耳元で、彼はそう囁いた。

効果を知られれば成功率が落ちる魔法の存在を敢えて彼女に教え、魔法にかかった者がどれほど従順に口を割るかを目の前で実演さえしてみせたのだ。

それは、一言で言うならば「抑止力」だろう。

この魔法をコニー相手に使う日が来ないことを願っている、と。

だが、一度しか使えないという性質やジェイド自身の性格を鑑みれば。

「……私はもうとっくに、あの魔法にかかっているかもしれないでしょう？」

知らぬ間に心臓を抉られて、本心を暴かれて、それでもその事実には気付けずにいるなんて。

そんなことを考えると、中枢から末端まであらゆる神経を余すことなく多幸感が支配していく。

全身の細胞が歓喜に打ち震えるような感覚が、彼女を襲うのだった。

「……そこでジェイドのこと怖がるって発想が出てこねぇとこがいかにもお前って感じだよな」

まぁ今更アイツのことが怖くなるなら最初からアズールと契約なんてしてねぇか、とシノは肩を竦めた。

あまり熱を上げすぎるのも考え物ですが、と続けるアンナも、

「以前何かの小説で目にしましたが、『相手が理想から外れる前に殺したいのが信仰』で、『理想から外れても変わらずに好意を持つことが出来るのが愛』で、『理想から外れたことすら見えないのが恋』なんだそうです。

　……仮にその定義が正しいとすれば、あなたのそれは紛れもない『恋』なんでしょうね。」