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「先導者とは、自らの器量で他の人間を牽引する存在だけを指すわけではないんですよ。」
シノが手持無沙汰に散らかした宝石を元あった木鉢に戻しながら、アンナはそんなことを言った。
確かに彼女は、人の上に立つ者にしては些か情けなくて頼りない。
大勢が抱く『理想のリーダー』像には程遠い、と。
「……ですが、味方を得る手段というのは自分の才能だけではありません。
彼女は情けない。が、情けないが故に、支えてやらなくてなくては、と他人に思わせることができるんです。」
最後の一粒を木鉢に戻し終えた彼女は、ふう、と息を吐いた。
「そういうこった。
もしアイツが立ち止まるんなら、その度にケツ蹴り飛ばして前向かせてやんのが あたしたちの役目ってやつさ」
あ、こういう話 聞くとすぐ調子に乗るからアイツには内緒な、とシノは悪戯っぽく笑う。
その時、あちこちに吊られたランタンの中で燃える火種が、一際大きく揺らいだ。
悠々と闊歩するサンダルの足音と共に響く聞き慣れた声に、ジャミルは思わず身じろぎする。
「おっ、なんだお前ら、まだ遊んでるのか？」
宵篝に照らされたカリムの大きな双眸は懐かし気に彼らに手元のボードゲームを映すも、ジャミルは狼狽を隠し切れなかった。
まさか、今の話を聞かれていたのか。だとしたら俺の心象は最悪だ。
そもそも、数刻前に寝かせたはずのカリムが何故まだ起きている？
猜疑心が剥き出しになった彼は、何故こんな時間に一人で出歩いているんだとカリムを詰る。
また誘拐されでもしたらどうする、と この辺境の島にいる以上 限りなく0に近い可能性まで引き合いに出すが、
「心配性だな、ジャミルは。
大丈夫だよ、ジェイドもコニーも一緒だったし。」
「──は？」
ぽかんと見開かれた石炭色の視線の先には、慇懃に笑みを浮かべる鱓の人魚と、その後ろでおじおずと緋色の眼差しを陰らせる少女。
よりにもよって、一番 カリムとの接触を忌避したかった相手だ。
いよいよ動揺が顔に現れ始めたジャミルに、ジェイドは何かを仄めかすかのように哂った。
「カリムさんは本当に親切な方ですね。色々と丁寧に教えてくださって……」
◇◇
2021.02.15 Happy Birthday, Anna!
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茨の國のぼっち(プロフ) - ああああぁぁぁ！！やった〜！続編ができてる！嬉しさでしにそう…この章も頑張って下さい！ (2021年1月20日 23時) (
レス) id: 9a68fed22a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：擂糸 | 作成日時：2021年1月20日 10時
