40話 ページ44
それからしばらくして___彼女の両親が死んだ。残されたのは財産と……血の繋がらない弟だけ。
戦争で孤児になることはよくある……だが彼女の場合はあまりにもかわいそうだ。
この里で生まれたかどうかもわからない、親の顔すらわからない彼女が、育ての親まで失った。
弟のこともそうだ。
愛する両親を殺した化け物が弟の中にいるだなんて、弟を憎く思っても仕方ない。
とにかく、彼女は…あの姉弟はかわいそうだ。
葬式の日には、彼女は一人弟を抱いていた。
「かわいそうにねえ……これから二人で、どうするのかしら」
「じゃあお前引き取ってやれよ」
「冗談じゃないわ!あいつが暴れたらどうするのよ!」
人々は声を潜めて話していた。
だが、忍の聴力を舐めてはいけない。まだ幼いとはいえ、彼女は十分素質がある……きっと聞こえただろう。
じき泣きだすはずだ……
そう思い彼女を見ていたが、彼女は一向に泣き出さない。それどころか、弟は自分一人で育てるとこの場の大人たち全員に啖呵を切ってみせた。
「私を殺してくれて構わない!!」
そういった時にはみんな彼女のかもす空気に呑まれてしまった。
俺はこの時、彼女への印象が大きく変わっていくのを感じた。
静かな子だと思っていた。いや、明るい子ではあるけれど、いつも冷静な、おとなしい子だと思っていた。
だけど、このとき俺は、あんな風に大声で叫べるのかと、正直おろどいた。
「Aはわがままを言わない子なんだ」
今は亡き彼女の父の言葉だ。
その通り、Aは俺といてただの一度も俺を困らせたりはしなかった。
わがままを言ったのは、あの時だけ。いや、あれをわがままと言うのなら、だけど。
あの日から、俺は彼女を激しい子だと思った。
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紗菜 - 続き、待ってます。 (2022年12月13日 23時) (レス) id: c2a2213ca9 (このIDを非表示/違反報告)
ワス - 応援してます(˘ω˘ ) (2022年2月7日 9時) (レス) @page47 id: f51baff03e (このIDを非表示/違反報告)
がー(プロフ) - もう大好きです!絶対続編読みたいです!もうやばいで大好きいいいいいいい!!! (2019年9月26日 0時) (レス) id: 8eb0f6b23c (このIDを非表示/違反報告)
センカ(プロフ) - 心さん» コメントありがとうございます!おもしろいと言っていただけて本当に嬉しいです!とてもやる気が湧いてきました! (2019年6月14日 19時) (レス) id: f204811481 (このIDを非表示/違反報告)
心(プロフ) - 初コメ失礼します。とても面白いです。更新頑張ってください! (2019年6月13日 7時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:センカ | 作成日時:2018年10月21日 18時