09.彼女の過去を心に刻む。 ページ9
「やぁやぁ、松岡くん、高山くん、お待たせー…ありゃまあ。高山くん待ちくたびれて寝ちゃってるよ」
「さっきまでは起きてたんだけどね…睡魔には勝てなかったみたいで」
「うーん…まあこれからそれなりの付き合いになるだろうし、慌てて顔合わせをする必要もないか。じゃあ先松岡くんとだね!」
「ん、うん?…顔合わせ?」
「お邪魔しますね、父さん。」
「ああ、あがってゆっくりしてっとくれ」
松岡くんの家に入る直前でやっぱり緊張してしまって、ぎゅうと二人の手を握りしめる。野沢さんは私を振り向いてにっこり微笑み、戸田くんは「大丈夫だよ」と私に声を掛けて手を握り返してくれた。
野沢さんに手を引かれ、松岡くんの家にお邪魔する。木の匂いがして落ち着く、なんだか“鬼太郎”らしいお家だ。鬼太郎はみんな、木の家に住んでるから。
「ててーんっ♪今度から僕達で面倒を見ることになった、Aちゃんのご紹介でーす!」
「ひぇ、あ、こ、こんにちは…」
わ、わ…松岡くんだ高山くんだ、目玉親父さんだ…!
…目玉親父さん可愛い、やっぱり茶碗風呂入ってる…うう。松岡くんのきょとんとした顔が、居たたまれ、ない。ああ、やだなあ。あがっちゃってばっかりだ。
「…人間の子、だよね?一体、どういう…」
「うーん、みんなで面倒見れたら一番良いけど、とりあえず僕と戸田くんで彼女のお世話する感じで!」
「…色々と訳ありらしくてさ、彼女」
「んで、その“訳”に関してはこの霊界端末で見てやってほしいんだ。知っといた方が良いことだけど、Aちゃんの口から言わせるのはなかなか酷だからね」
野沢さんが取り出したのは携帯用霊界テレビのような小さなもので、彼は徐にそれを卓袱台の上に置く。
詳しい内容を聞かされていない戸田くんもそれに興味を示して、だけれどどこか心配そうな顔で私の様子を窺ってくれた。
「……僕達が見ちゃっても、大丈夫なのかい?これは…君の過去なんだろう?」
「…野沢さんが見せようと判断したなら、それはそうした方が良いことなんだと思う。…それに、私ばっかりが知ってて、戸田くん達が何も知らないままにするのは…私、ずるいことだと思うから」
「…Aちゃん…分かった、ありがとう。君の過去、見させてもらうよ。」
戸田くんに頭を撫でられて、気恥ずかしくなって視線を下げてしまう。
そうすると野沢さんと目が合って、彼は嬉しそうに目を細めて笑ってくれた。
10.その時の君は大人びて見えた。→←08.彼女の手の跡は、とても悲しい。
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あかさ(プロフ) - まさに理想的な作品です!ありがとうございます!これからも自分のペースで更新頑張ってください応援しています! (2020年7月10日 17時) (レス) id: b95934ac5e (このIDを非表示/違反報告)
天ぷらうどん(プロフ) - 久しぶりにここまで好きだと思える小説に出会えました。ありがとうございます。 (2020年4月14日 23時) (レス) id: 66592d74f2 (このIDを非表示/違反報告)
花音 - はじめまして☆
こんな素敵な小説が読めて感激です(≧∇≦)
続き頑張って下さい♪
これからも応援しています(* ̄∇ ̄*) (2018年12月2日 1時) (携帯から) (レス) id: c2a24ddc02 (このIDを非表示/違反報告)
☆美海★(プロフ) - はじめまして!感動しました!続きを待ってます! (2018年10月13日 7時) (レス) id: f265199ff6 (このIDを非表示/違反報告)
夢桃 - 自発的社畜さん» 続き待ってました!!松岡くんとの絡みがありとても嬉しかったです!占ツクでの楽しみが出来ました!ありがとうございます!! (2018年9月4日 18時) (レス) id: 213a5fa962 (このIDを非表示/違反報告)
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