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「ん。いいよ。」


今はまだ、何にも聞かない方がいいだろうな。

そう思って、何にも声はかけなかった。‥ううん、かからんなかった。だって、まだ何が何だかわかんないんだもの。

ただただこの時は、いつもと違う様子の松潤に困惑して、それでも頭は冷静で、どうにかしなきゃ、って気持ちでいっぱいだった。


甘えるみたいに頭をおれの肩に擦り付ける松潤が、猫みたいだなぁと思う。おれも、頭をコツンと松潤の頭に寄せて、握った手もぎゅうっと強く握りなおした。



そうやって、松潤の言葉をゆっくりゆっくり待っていると、


「‥‥俺って、やっぱ、めんどくさい?」


ようやく松潤が口を開いて、そう言った。
らしくない、ちっさな声だった。


いつだってまっすぐな彼らしくない、不安に塗れた声だった。



「‥‥誰が言ったの、そんなこと。」


許さない。


そう思ったのが、最初の感情。
ただただ素直でまっすぐなこの子を、否定したのは誰。思った以上に腹が立って、出た声は低かった。
その声色に松潤も気づいたのか、「‥リーダー?」と不思議そうな、不安げな声で俺を呼んだ。


それでも、逃すわけにはいかない。


「あのね、松潤はまっすぐなだけ。めんどくさくなんてない。そんなこと言うやつ、おれは許せない。きっとみんなだって許せない。」
「でも、‥おれのわがままが、みんなを困らせて‥」
「だから誰が言ったの、ソレ。みんなっておれらのこと?ほんとにそう思ってんの?‥おれらが、まつじゅんの言うことでこまってるって?」
「でも、やっぱり俺が折れなきゃいけない時だってあるだろうし‥」
「あのねぇまつじゅん。それ、だれの言葉なの?オマエの言葉?もう『でも』は禁止。変な言葉に惑わされて、自分見失っちゃわないで。」


でも、でも、と繰り返される言葉は、彼の言葉じゃなかった。言葉はのろいだ。何処かで聞いた呪詛に毒されて、変なところで繊細なこの子の自信がへちゃげてしまった。

ああもう、おれらの大切な末っ子の、おれらに対する信頼までもを踏みにじった不届き者はだれだろう。
腹のなかでフツフツ怒りがこみ上げるけれど、それは一旦置いておこう。

今は、目の前のカワイイ弱虫を、復活させなくちゃいけない。



「ねえ、じゅん。顔上げて。」


下げた顔にはきっと涙が浮かんでるんだろう。
ズ、と鼻をすする音、上げた顔は紅潮して、大きな目はキラキラしていた。

◆ 3→←◆ 1 mとo



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作者名:とことこ | 作成日時:2017年7月28日 14時

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