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◇ 1 sとm ページ23

(m視点)


俺の知る、俺の尊敬する櫻井翔という男は、どんな時でも目標に向けてひたむきに努力をする人間である。

そんな彼の背中を追いかけた幼い俺は、まだ知らない。



どんな辛さをその胸に抱えていたかなんて。


今、隣で、正面で、彼の姿を、顔を、しっかりと見て初めて気付く。‥直向きな努力と一緒に、どんなにたくさんの苦労を体に課して、どれだけ無理を重ねているのか。

限界なんてない、って根性論は、本当に頑張ってる人には言いたくない。だって、限界はあるんだから。‥限界まで頑張るあなたを、止めたくないけど、でも!‥でも、限界を超えて倒れるあなたの方が、見たくない。






役作りだ、って言いながら、どんどん痩せてく翔さんのことを、みんながみんな、ハラハラした顔で見てた。

「翔くん、やりすぎじゃねえか?」ってほんわか言ったリーダーに、「そんなことないよ」と返した翔さん。
「翔ちゃん、そこまでしなくてもいいのに」と本人にははっきり言えずにぐずぐず呟いたまーの頭をゆっくり撫でて、「おれはダイジョーブ」と笑った翔さん。
「加減知りなよ翔さん」とキツイこと言ったニノには、困ったように笑いかけた翔さん。


おれは、何にも言えなかった。


「今度、病気の人の役すんの。‥だから、ご飯とか、コントロールしようと思ってさ、‥潤が作るご飯、ちょーウマくって食べ過ぎちゃうから、明日からおれのは準備しなくていいよ。」

そう言われて、わかった、って返したことを後悔した。こんなことなら無理矢理にでも食べさせる約束取り付ければよかった。
そもそも!プロデューサーもプロデューサーだよ。こんなクソ忙しい人に、ここまで要求するなんて。

今日もまた、朝メシ食べるおれの隣で翔さんはサプリメントを飲んでいた。


「翔さん、朝、それだけ?」
「そー。」

何粒かを手の上に出して、それをざらっと口に入れて水でゴクン。それで翔さんの朝メシはおしまい。
誰より食べるのダイスキな人なのに。


「じゅーん。ヘンな顔、なってる。」

おれの眉間に翔さんが手を伸ばして、ぐりぐりと押さえた。
誰のせいだと思ってんの。睨んでやったら、はははは!と笑う。

「ごめんごめん。俺のせいだよな、わかってるよ。」

そうだよ。あなたのせい。
あなたのその、痩せ細った体のせい。

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作者名:とことこ | 作成日時:2017年7月28日 14時

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